11月10日(火)

いつのまにか
マスクをはずすと
寒い、と感じるようになっていた

待ちあわせたカフェの
うしろの席から話し声が聞こえる

もう何か月も
家族以外のだれとも会わなかったんです
でも 今日は

ちいさなテーブルのうえに広がる
午後のひかり
わたしと
これからくるひとのための

窓ガラスのそと
ベビーカーが通りすぎる
雑踏のなかでゆいいつ
マスクに守られず
木枯らしにさらされている
赤ん坊の頬は
朝の水で洗われたばかりの林檎のように
ひかりだけを浴びて

だれかのために
じぶんのために
無防備でいる

そんな澄んだ強さから
目をそらしているうちに
すり減ってしまったものを
マスクで隠したまま

今日
わたしたちは
ふたたび出会う

東京・杉並
峯澤典子



11月9日(月)

宝石の意味をあらわす言葉は
花言葉のように
石言葉というのだろうか

ものに意味がある

タンザナイトの意味は「転機を助ける選択の要石」
アイオライトの意味は「進むべき道を示す」
グランディディエライトの意味は「新たなる冒険」

ものに意味があるという考え
石の中に織り込まれたクラック
クラックが響きに姿を変えて続いている深い
深い
土、海
海の中にいた生きものたちの瞳

宝石の上に浮上する
宝石の上に
そのやさしい顔を出す

ここはいつ?
やがて空にかかる月が二つになり三つになり
七つになるまで
待つ

海の生きものは
海の生きものの体の動かし方で話すので
わたしはそれを待たなければいけない
そこに自分のなにを同調させることができるのか
目を閉じて自分のあちこちを探すのだ
ここに言葉はない

場所不詳
柏木麻里



11月8日(日)

空気の日記 11月8日

朝から現代詩手帖12月号(現代詩年鑑)の「詩集展望」を書いている
コメダ珈琲店のカウンターで
マスクを着けて
書いている
詩集はどれも面白いのに
書くことには30分おきに嫌になっている
散文を書く才能がない
でも詩の注文はほとんど来ない
息をするように詩がかけるやつがうらやましい
そう見えるやつがうらやましい
たっぷりサイズのコメダブレンドを飲みながら
モーニングのAのゆで卵に塩をふり
食べようとしていきなり評言を思いつく
そのくりかえしで
ゆで卵が食べられない

昨日はムサビのエミュウのテラスで原稿を書いていた
散文が苦手であることに変わりはないが
ここで教務補助をやってる画家が
火曜日にギャラリーで購入した彼女の絵を持ってきてくれたりする
油絵の研究室に別の助教を訪ねて
ちょっこっと雑談したりする
コロナで正門の警備員さんが怖くなった
学外者はエミュウや食堂、売店を使えなくなった
昨日は初めて北門から入って
「ここの元非常勤です」と言って
「エミュウでここの教員と待ち合わせです」
と言ったら
警備員さんは優しかった
それでも学内の世界堂は使えないから
吉祥寺のユザワヤまで行かなきゃならない

コメダのの窓に夕陽が射して
まだ原稿は書けていない
締め切りは三日前
髙木君、ごめん

東京・小平
田野倉康一



11月7日(土)

立冬、
って卵が立つんだっけ
と思って寝たままググったらそれは立春で
しかも季節の何らかのマジックが卵を立たせるわけではないらしい
がっかりしてもう一度布団にもぐる
数日前に毛布は追加した
立たせてみたかったなあ冬の卵
といっても冷蔵庫の卵は切らしている
というか買い物に行かないとあらゆるものが切れかけている
そういえばトイレットペーパーの買い置きもそろそろない
今もし春のように突然外出自粛って言われてあらゆる売り場のトイレットペーパーがなくなったら
かなりやばい
と思うのに起き上がれない
もう疲れたよパトラッシュ(笑)
くるひもくるひも遠隔授業の資料をつくって
あいまに仕事の本を読んで原稿を書いて
楽しみにしていたはずのたくさんの詩集は積ん読状態で
部屋は埃だらけ
返信すべきメールにつけた★マークの列を見るたび気が重くなるし
たまに眠っている途中で不安に襲われてガバッと起きるし
何もかもがめんどくさくなって泣きながらPCに向かったりする
たぶんかるくウツっぽい
母親には何日も電話していない
ほんとはアメリカの大統領選挙だって気にしたい
何日か前にツイッターのタイムラインで見かけて気になったことを思い出したい
昨日は
とりあえず食べるものを調達しようと
マスクだけはせめて派手なものを選んで出かけたコンビニで
急に何を買っていいかわからなくなって
とりあえずきれいなものを見ようと外へ出た
空を見上げたらうろこ雲
カサブタみたいだ剝がしたいなって
思うあいだにも
あれ見さいなう空行く雲のはやさよ
とか言うひともいないからぽかんと少し口をあいたまま見送って
流れ過ぎていく
今日は立冬
卵はないけれど
何とかかんとか立ち上がるわたしはいる

東京・神宮前
川口晴美



11月6日(金)

木々の葉が少しずつ赤や黄色に色づきはじめた。
日頃の暗い山肌もこの時期は、つぎつぎ灯をともすように
ぱっと明るく輝きはじめる、それがうれしい。

「滅びの前の明るさ」という、太宰の言葉を
紅葉の頃になると必ず思い出すが
暗い顔で散るより、目いっぱい明るく笑って
散るような、葉っぱが好きだ。

秋は木の実も熟れるが、日差しも熟れる。
特にはちみつ色に熟した、午後の日差しは
うっとりするほど、きれいだ。
壁や床にたっぷりこぼれているのを、見つけると
ジャムの瓶に詰めて、棚に並べて置きたくなる。

赤や黄色に日本の山が染まりはじめたこの頃。
アメリカでは、ちょうど大統領選がはじまって
赤と青がせめぎ合いながら、染まっていく大陸の
2色に塗り分けられた地図から、目が離せない。

接戦が続き、異様な熱気に湧く、開票所の様子を伝える
配信動画を、深夜から早朝まで見守っていて
目が痛くなった。

「STOP THE COUNT!」
「COUNT EVERY VOTE!」

二手に分かれた、トランプ派とバイデン派の
老若男女の応酬合戦は、ノリノリの音楽に合わせて
歌ったり踊ったり、ロックフェスのようで、熱いし楽しい。

一触即発の危険性も孕んではいるが、それでも、笑顔があり
楽しい、が混ざるところが日本と違うところだろうか。
政治的なことであれ、文化的なことであれ
我を忘れて、熱中することに

ファン(楽しい)がないわけがない。

じつはわたしも先日、国会前のロックフェスに参加してきた。
国会議事堂の前で、警護のお巡りさんとかいる場所で
何をしてきたか、というと

音楽にのって、マイクをもって
自分の詩を声に出して、読んできた。

楽しかった。

教室であろうと、ライブハウスであろうと
路上であろうと、国会前であろうと
わたしのやることは、いつも
いっしょ。

自分の書いた詩を、読む。
それだけ、だ。

じつは、お巡りさんがじわじわと近づいていた。
・・・・・・・・・
「君死にたまふことなかれ」が不敬罪に当たると非難されたとき
与謝野晶子は「歌は歌に候」と言い切った。
活動家としてメッセージを発信し続ける
デトロイトの黒人の女性詩人、ジェシカ・ケア・ムーアも
「わたしは、単なる詩人です」と答えている。

つまり、彼女たちは、こう言いたいのだろう。
「わたしは、わたしの仕事をしているだけです」

わたしも、同じく、問われたら、答えるだろう。
「これは詩です。わたしは、ただの詩人です。(Just a Poem, Just a Poet.)」

それ以上でもなく、それ以下でもないものとして
書いて、立って、読んでいる。

わたしの思いはいつも、それだけ。
そして、わたしは、わたしの好きな仕事ができて
とても、楽しい。

埼玉・飯能
宮尾節子



11月5日(木)

機械の動きを見て笑っている夢を見る。一週間ぶりの在宅勤務。部署の先輩が異動になる。山本・hさん・なまけが三野(新)さんと沖縄に行って、戻ってくる。滞在中に撮られた1,200枚ほどの写真が共有される。以下、山本撮影。久高島で撮られたらしい海や岩、クバ(ビロウ)の写真。海岸で妙なポーズを取っているhさんの写真。海面を撮る三野さんの写真。でんぐり返しの姿勢で死んでいる(?)蟹の写真。岩の写真。岩を撮る三野さんの写真をいろんな角度から撮った写真。ヤドカリの写真。ヤドカリを手に乗せている写真。看板の写真。看板の文字を読む。《ハビャーン 琉球開闢の祖アマミキヨが降誕、あるいは上陸した聖地とされる。漁労の神役であるソールイガナシの神は、ハビャーンの森にいるタティマンヌワカダラーだといわれ、二頭の白馬として語られることが多い。》《ビロウの社 カベールの林の中には、ビロウ・クロツグやアダンなどの植物が生い茂り、様々な動物たちの住みかにもなっています》《久高島フボー(クボー)御嶽 久高島の中央西側にあり、琉球開びゃく神話にも登場する七御嶽のひとつです。昔から霊威(セジ)高い御嶽として、琉球王府からも大切にされてきました》《ご協力ください 久高島フボー御嶽は、神代の昔から琉球王府と久高島の人々が大事に守ってきた聖域です。神々への感謝の心と人々の安寧を願う場所であるため、何人(ルビ:なんぴと)たりとも出入りを禁じます。》枯れて色の抜けたクバが道の奥でうなだれている写真。ヤドカリの写真。ハイビスカスの写真。重なり合う木の葉の写真。撮った写真を見ている三野さんの写真。自転車に乗る三野さんとhさんの写真。蜘蛛の巣の写真。蜘蛛の巣に触れる手の写真。牛の写真。
《外間(ルビ:ふかま)・ウプグイ
正月をはじめ主要な年中行事における祭場である。
一九六〇年代のある時期までは〈外間〉という家とその前庭部分(タムトゥ座)で構成される祭場であった。外間根神(ルビ:ふかまにーがん)や外間根人(ルビ:ふかまにーっちゅ)という神役が出るべき家系とされ、外間家の一番座(ルビ:いちばんざ)の祭壇で祀られていた香炉(ルビ:こうろ)が村落祭祀の対象となっていた。一九六〇年代に、一番座の祭壇は外間家とは別棟の拝殿(ルビ:はいでん)(現在の建物)として祀られる形に変化した。建物の中央部には、首里城正殿二階の空間の大庫理(ウフグイ)・斉場御嶽の祭場の大庫理(ウフグーイ)と同名の「ウプグイ(大庫理)」がある。
また、向かって左側の建物(アサギ)は王家との関係を示す言い伝えが残されている。『遺老説伝』(ルビ:いろうせつでん)(十八世紀初頭に編纂)には、村落の始祖であるシラタルー夫妻の二女が王の妻となり懐妊するが、放屁したことをあざ笑われて島に戻り、ここで金松兼を出産したという話が収められている。金松兼(ルビ:かにまちがに)は、イシキ浜で得た「黄金の瓜子(ルビ:うりざね)」を持って首里に行き、王の世子として認められたという。》
石垣の写真。屋根の上のシーサーの写真。地面に落ちてねじれたガムテープの上に、たくさんの蟻が貼りついている写真。畑で燃えている火の写真。堤防の写真。《港内徐行》海辺の写真。フェリーに乗っている写真。洞窟? の写真。森の写真。《聖地 世界遺産 斎場御嶽 入口》《知念岬記念公園入口》雲の写真。石塔の写真。《農産物直売店》食堂の写真。電話をしながら横断歩道を渡る人の写真。モスバーガーの看板の写真。スマートフォンを操作している三野さんの写真。空港の写真。飛行機の写真。機内の写真。飛行機から見た夜景の写真。
工事現場の前で警備員が列を組んでフェンス前に並んでいるのを背にして、椅子に座りながらプラカードを持っている人たちの写真。手前にはおそらく機動隊員。旗や看板の写真。一部の文字はフレームに収まらずに途切れていたり、斜めに傾いていたりしていて読めない。画質のため小さい文字がほとんど読めない。拡大してかろうじて読める文字もあるが、推測の域を出ない。《CAMP SCHWAB》《辺野古新基地NO》《〔反射のため、読めない〕青い海》《美ら海を 基地に〔機動隊員の背中で遮られ、読めない〕たま〔同上〕(別角度からの写真では「し」を確認。「美ら海を 基地にしてたまるか」、か)》《新基地 ●●(「民意」、か)はNO》
ジープがこちらに向かって走ってくる写真。《いきもの おびやかす 基地は いらない 工事を止メェて 早くやメェ》《●●●●●(「沖縄県民よ」、か) 今こそたちあがろう》《ヘリ基地反対協》《予算をコロナ対策へ! 違法工事を中●●(「止!」、か)》《辺野古新基地建設反対 普天間基地の固定化を許すな!》《テント 等設置 禁止》《これまで再三にわたる指導にもかかわらず、依然として違法状態が解消されていないため、これらの物件を、直ちに撤去し、道路を現状に回復してください。》《張り紙、看板等の設置を禁じます。》《前方歩行者通行あり》《ここは、歩行者道路です。立ち止まらず速やかに 通行して下さい。》《取付物等があった場合は、 沖縄防衛局が撤去・保管します》《物を取り付けたりしないで下さい》《辺野古新基地建設NO! 違法工事はただちに中止せよ》《〔フレーム外のため、読めない〕海を守る〔同上〕への責任(冒頭は不明だが「海を守るのは 未来への責任」、か) 辺野古新基地NO!》《US MARINE CORPS FACILITY 米国海兵隊施設 BEYOND THIS YELLOW LINE IS US FACILITY AND AREA UNAUTHORIZED ENTRY IS PROHIBITED AND PUNISHABLE BY JAPANESE LAW この黄線の内側からは提供施設内です。 許可なく立ち入った者は日本国の法令により処罰される。》稲? ススキ? の穂の写真。花壇の写真。《手を触れないでください。お花を大切に!》
バラックのようなものが並んでいる写真。びっしりと並ぶ警備員の写真。《完成不可能な〔旗がねじれていて、以下読めない〕》《沖退教〔車両に遮られ、以下読めない〕》《島ぐるみ会議宜野〔同上〕》《新基地断念まで 座り込み抗議 不屈 2308日》《民意無〔別看板に遮られ、読めない〕やめろ!》《WARNING UNITED STATES AREA(FACILITY) UNITED STATES FORCES, JAPAN UNAUTHORIZED ENTRY PROHIBITED AND PUNISHABLE BY JAPANESE LAW 警告 米国区域(施設)・在日米軍 許可無き立ち入り禁止 違反者は日本国法律により罰せられる》《WELCOME 辺野古社交街》
市街地の写真。黒いビニール袋でつくられた土嚢の並んでいる写真。古いオートバイの写真。《ホステス採用 泡〔フレーム外のため、以下読めない〕》と書かれた看板の横で、まぶしそうな顔をするhさんの写真。《●●●●(塗装が退色していて、読めない。「CLUB」、か)CHAMPION》《NEW OKINAWA》《スナック ハワイ》《辺野古コミュニティーセンター》アメリカの国旗が描かれた廃墟? の横を歩くなまけの写真。赤く縁どられた葉っぱの写真。《(アナガー)マツンギャミヤーガー》《デンデン墓》砂浜の写真。ハマヒルガオ? の写真。フェンスの写真。《警告 このフェンス等に以下の行為を行うことは禁止されており、日本国の法令による処罰の対象となりうる。 ー物を取り付けたり貼り付ける行為 ー汚す行為、破損する行為、取り除く行為 違反行為は日本国警察に通報する》フェンス越しに向こう側の写真を撮ろうとするhさんの写真。集まった(集められた?)貝殻の写真。それを撮ろうとするカメラの写真。《ミーバカ》《駐車禁止 関係者以外車両進入禁止》《新基地建設阻止! 闘争開始より8年(2639日)の命を守る会の闘い と テント村 座り込み 6039日》《コロナウイルス感染拡大防止のため平日午前中のみ監視行動をしています》《勝つ方法は あきらめないこと》《民意は新基地建設NO》広々とした東屋? の真ん中に、事務椅子が二つ並んでいる写真。《戦死者御芳名〔以下、列挙される人名は読めない〕》《平和之塔》街並みを背景に、高台から写真を撮っている三野さんの写真。再建途中の首里城の写真。瓦礫の写真。《首里城正殿は、国王が様々な祭祀や政治を行った場で、古い記憶などによると創建から沖縄戦までに4回消失したとされています。》役人装束を着たフェイスシールドの男が御開門(うけーじょー )の儀式をしている写真。ライブ中継のスクリーンショット。《あとから来る君たちへ》《― 平和宣言 ― 時代の変化を見極める英知 この国の誇りを守りぬく勇気 そして青年として諦めない情熱 我々は理想とする真の日本建国に向けて 永遠に平和を創造し続けることを誓う》波上宮の写真。明治天皇像の台座の写真。フェリー? に乗っている写真。石垣の写真。緑色・ピンク色の砂粒の写真。蜘蛛と蝶の写真。自転車に乗る三野さんの写真。最初に見ていた写真へとつながっている気配を感じる。
空港の写真(沖縄に到着?)。自動車の写真。この自動車がくり返し出てくるので、三野さんが借りたレンタカーだとおもわれる。人気のない売店の写真。アーチ状のモニュメントの写真。《全学徒隊の碑》白い塔の写真。《旧ソ連ハバロフスク 2565.02Km ↑》砂浜の写真。《平和の礎(ルビ:いしじ)〔下部に記述が確認されるが、小さすぎるため読めない〕》人名が羅列された石碑の写真。ムカデの写真。ガジュマルの写真。二年前に撮影された(作者)の写真のスクリーンショット。宿の写真。スーパーで買ったらしい総菜の写真。惣菜を囲んでみんなで部屋の床? に座っている写真。オリオンビールの写真。夜の写真。夜の駐車場にいる猫の写真。クバを背景に妙なポーズ(クバを真似ている?)を取っているなまけとhさんの写真。石碑と折り鶴の写真(石碑の文字は読めない。「嘉數の塔」、か)。《トーチカ トーチカとは、ロシア語で「点」や「拠点」を意味する軍事用語で、防御(ルビ:ぼうぎょ)の中心となる陣地(ルビ:じんち)のことです。》《奉献》《再び戦争の悲しみが繰りかえされることのないようまた併せて沖縄と京都とを結ぶ文化と友好の絆がますますかためられるようこの塔に切なる願いをよせるものである》《青丘之塔》《●●●● ●●●●●●●(フラッシュを受けて、読めない。「観光名所 宜野湾嘉数高台」、か)》地球儀の皮をところどころ剥いたような建物の写真。《宜野湾市住居表示案内図》《米海兵隊基地 普天間飛行場》夜景の写真。朝の写真。《●(「事」、か)故 多発 前の車 確認》《●●(「西普」、か)天間 ●(「住」、か)宅地●(「土」、か)地区画整理事●(「業」、か) ●●●(車両に遮られ、読めない。別角度から撮られた写真で確認、「施行者」、か):●(別角度から撮られた写真で確認、「宜」、か)野湾市》切り崩された丘の写真。朝日に輝く雲の写真。《沖縄リージョンクラブ レストラン》日本とアメリカの国旗が丘の上に掲揚されている写真。
シチメンチョウ? の写真。《久志大川田市場》《久志岳ゴルフガーデン》《NO! ENTRY》《NO NEW BASE》戦隊ヒーローを模した写真。《●(支持体が損壊していて、読めない。「私」、か)達は古里を守り、子供達を守る 夢は必ず叶う 命ど宝 辺野古大浦湾を守り抜く》《辺●(「野」、か)古新基地建設を中止し、 予●(「算」、か)を新型コロナ対策に回せ! 希●(「望」、か)の海、大浦湾に杭は打たせない!》ピンク色に塗られた柱が目立つ、野球場のベンチのような写真(キャンプ・シュワブ近く? のバラック? の写真とおもわれる)。《普天間5年以内 運用停止嘘 日目》座り込みをする人たちが機動隊員と警備員に囲まれている写真。タンクローリーが並んでいる写真。警備員に向かって指をさしている人の写真。覆面姿でビデオカメラをかまえる機動隊員の写真。
以下、hさん撮影。港の写真。《AMERICAN VILLAGE》《RAT TRAP🐁 DO NOT TOUCH さわるな》《FORCE SUPPORT SQUADRON》《Please Scan Your ID for COVID-19 CONTACT TRACING》謎の絵の写真。資料館の展示? の写真。《15世紀頃 越来グスクの時代を巡る》瀬戸物屋の写真。《セトモノ店》資料館の展示? の写真。《黒人〔草に遮られ、読めない〕して〔同上〕は〔同上〕栄》シャッターが下りた店の写真。《部屋貸 福祉課 1日¥1,000より》《お願い この看板を動かしたら 元の位置に戻して下さい》アーケード街の写真。《〔青いビニールテープが貼られていて、読めない。「AMERICAN PIZZAMAN」、か〕》ボールプール用のボールのようなものがビニール袋に入れられて捨てられている写真。《Can’t Park here. a fine $50 or ¥5000》なまけが木々の奥からこちらに向かってくる写真。《第一外科壕跡》《母校にゆかりのあ●(「る」、か)相愛樹●(「を」、か) 思い出の樹としてこの地に植えまし●(「た」、か)》座り込み用の椅子が畳まれて置かれている写真。《ご協力を! イスは各自で お願いします》カバンに収納されたプラカードの写真。警備員が並んでいる写真。《CAMP SCHWAB》《ホステス採用 泡盛》廃墟? の写真。荒らされた室内の写真。フェンスにかけられた網の写真。《NO NEW BASE》妙なポーズを取るなまけを撮る三野さんの写真。木を背景にしたhさんの写真。蝶の写真。
《大里家(ルビ:うぷらとぅ)
久高島の旧家の一つで、母屋の東側に位置する神屋が拝みの対象となっている。大里家にまつわる言い伝えが二つある。
●イシキ浜に流れ着いた五穀の種子の入った壺を拾い上げた人物については様々な説があるが、その一つに、大里家の始祖であるアカッツミー夫婦がいる。大里家は「五穀世ウプラトゥ」とも呼ばれ、アカッツミーは五穀豊穣の神として祀られている。
●大里家の娘であったクンチャサヌルが、第一尚氏最後の王の尚徳王が久高島にやってきた時に恋仲になった、という言い伝えがある。それによれば、尚徳王が久高島滞在中に首里でクーデターが発生し、急きょ首里に向かったものの、時すでに遅しと悟って途中の海に身を投じた。大里家には戦前まで「尚徳王の簪(ルビ:かんざし)があったと伝えられている。》
《御殿庭(ルビ:うどぅんみゃー)十二年ごとの午年に行われてきたイザイホーや、村落の主要な年中祭祀の祭場である。広場の一角には、中央に神(ルビ:●●(小さすぎるため、読めない。「はん」、か))アシャギが建ち、神アシャギに向かって右側には村落の始祖の一人とされる百名シラタルーを祀った神屋(シラタルー拝殿)、左側には捕獲したエラブウナギ(イラブー)を燻製にする焙乾屋(ルビ:ばいかんやー)がある。
イザイホーとは、久高島で生まれた三十歳(丑(ルビ:うし)年)から四十一歳(寅年)までの女性が、祖先のセジ(霊力)を受け、島の祭祀集団に入る儀式である。イザイホーの時には、神アシャギはビロウ(クバ)で壁が作られ、入口には現世と来世をつなぐ象徴とされる“七つ橋”がかけられ、神アシャギ後方のイザイ山には女性たちが三晩籠(ルビ:こも)る“七つ屋”が建てられた。》
自転車に乗る三野さんと山本の写真。シーサーの写真。《えいこはなばたけ》岩に開いた穴の写真。年輪のような模様が浮かぶ岩の写真。錆びた櫛の写真。岩の上に乗っている白い粉の写真。クバを撮る三野さんの写真。石造りの祭壇? の写真。ガジュマル? の写真。《斎場御嶽への参道》
山本、hさん撮影のフィルム写真が60枚ほど共有されるが、力尽きる。なまけと三野さんの写真は共有待ち(?)。「日記」制作の合間に「三野新・いぬのせなか座 写真/演劇プロジェクト」の座談会の文字起こし修正。修正完了分を笠井さんが公開する。今月末に発表予定の原稿の確認。夕食。年明け締め切りの原稿用に取り寄せた資料を読む。

東京・高田馬場
鈴木一平



11月4日(水)

アメリカ大統領選挙は開票日
両候補が競り合っている
どちらになっても内戦だろうかと思うほど
不穏な空気が伝えられている
日本では国会中継がはじまり
論点をそらし対決を避けるいつものあれ
欧州では深刻な第二波が押し寄せている
東京五輪の動勢が聞こえなくなってきたから
大きな判断が目前かもしれない

新型コロナウイルスは
人と人との接近によって
物理的に
世界中に拡散した
いわば手渡しのように
様々な防衛をくぐって
たった一箇所から
あらためてその
伝播の確実さと素早さを思う
人と人のコミュニケーションは
必ずどこかで途切れるのに

我が家のクルマは冷却水が吹き出して
また修理工場に入った
この春から本当によく乗った
ステアリングの感覚がいまも掌にある
自分の居場所のようで
移動もzoomもクルマだから
15年落ちだともたない
もっとも最近は
電車移動に抵抗がなくなったから
修理してても大丈夫

「新しい日常」の
「新しい」がとれて
端々のゆがんだ日常が残った
春は日々輝きをます空気と
禁じられた外出のちぐはぐさに
空を見上げた
この冬の眺めはどんなだろう
三年ぶりの木枯し一号は私を避けてとおり
穏やかな秋の日だった

東京・世田谷
松田朋春



11月3日(火)

来年の春のためにチューリップの球根を買った。
毎年買うのを忘れていたが、今年は覚えていた。
夏に枯れた木を抜き、空いた植木鉢に球根を植える。
植え付け時期は紅葉がみごろになったころ。
つまりもう少し先だ。
このまま忘れなければいいのだが。
この世界に残すべき野菜をひとつだけ選べといわれたら
タマネギを選ぶはずだ。
タマネギのないカレーが想像できない、
それだけの理由で。

東京・つつじが丘
河野聡子



11月2日(月)

46年ぶりの(満月の
ハロウィンが終ったので冬がおとずれた
今夜 空を見上げても
地球は見えない
あの星は夢になって久しい

ウイルスに生存期間があるように
あるいは感染者に死がおとずれたように
どの星にも寿命がある
きみの星ではどうだ?
空気は甘く 夜はまだ若いままだろうか
気分は苦いけれど
それは満月が終ったからではなくて

未来が少しずつ欠けていくのを眺めながら
わたしたちは
聲をなくして
みな少しうつむいて何か祈りの準備のようで
(これも仮装のたぐいかもしれない
遠いところから見るとそれは
地上に黒く立ちならぶ杭のようで

福岡・薬院
渡辺玄英



11月1日(日)

出かける前にFacebookをチェックすると
Aがとても困っている

Aはニューヨークに住んでいて
街ではNY State lawにより
マスクとソーシャルディスタンスが義務化されているはずなのに
どこに行っても安心なはずなのに
住んでいるビルディングの中で
住民がマスクをしないらしい

Aはそんなに若くない
93歳の母親だっている
だから
エレベーターで一緒になった住民達に
「マスクをして/ I try to ask my neighbors to wear masks」と頼んだところ
脅され /threatened by them
写真を撮られ /take my photo
警備員達ですらAの事を脅してきたそうだ /security guards threaten me
(I do not feel safe in my home. It’s like psycho-land here)

そんなAの記事に
コメントを書こうかどうか迷って
結局「悲しいね」ボタンだけ押すと
映画を観に
私は東中野に向かう

到着した
「ポレポレ東中野」では
色とりどりのマスクをつけ
行儀よくぴったりと並んでいる
たくさんの人達が既にいる

みんなの目的は
『私たちの青春、台湾』
2014年に台湾で起きた学生運動
「ひまわり運動」に参加した
台湾人と大陸/中国人の
前後を追ったドキュメンタリーだ

そんな映画だから当然
香港も天安門も出てくるし
香港のあの雨傘運動と
台湾のこのひまわり運動とが
関係者同士で連絡を取り合い
連携していた事をはじめて知ったが
多くの革命や運動が
辿ってきた故事そのままに
どんなに盛り上がりを見せ
立法院を占拠したりするような
成果が一時期あったとしても
必ず来る終わりを
彼らだって回避は出来ない

映画の前半で
社会を語り、よく走っていた
陳為廷は今はもう
台湾に居場所を無くして
アメリカ留学を目指しているし
大陸人にも関わらず
ひまわり運動に参加した
蔡博芸は
ずっと彼女を心配していた
家族のいる中国に戻り
もはや連絡すら
今は容易に取る事が出来ない
(そういえば映画の中で
彼らと共にご飯を食べ
笑い合っていた
香港雨傘運動の指導者の
黄之鋒もつい先日
一時逮捕されたのだっけ)

上映後
台北にいる監督と会場がオンラインで繋がれて
本日のゲストのY先生とトーク
中国語が堪能なY先生と
監督とのやりとりは軽妙で
観客にしたって
遠い場所とオンラインで瞬時に繋がる状況を
今や日常のように感じているから
トークは時間通りスムーズに進むけど
明るく振舞っている
監督はどこか疲れて見える
Y先生が聞くと
やはり疲れているという
この映画は
台湾のアカデミー賞である
金馬奨を受賞したし
世界中をコンペで回ったけど
国内で
「お前は緑(民進党)なんだろう」だとか
色々言われ
関係者にも迷惑をかけたりして
その後コロナ禍もあったから
今はとても疲れているという

トークが終わると
次の回が始まる前に
全部の席を消毒するというので
慌てて外に出ると
続けて上映される
『相撲道~サムライを継ぐ者たち~』を観るべく
人々が列をなし並んでいる
友人と共に
パスタでも食べようかと
その後向かった店にも長蛇の列
どうやら前日
美川憲一が来店して
「美味しいわよ」とポーズを決め
インスタに写真を上げたらしい

江ノ島に戻ると
日曜日の海で子供達が遊んでいる
いつものように
「空気の日記」に添える写真を撮りに
iphoneと鍵だけを持った軽装で
何枚かシャッターを押しているうちに
うっかりマスクをし忘れている
自分の顔にふと気づく

神奈川県片瀬海岸・江の島
永方佑樹