11月5日(木)

機械の動きを見て笑っている夢を見る。一週間ぶりの在宅勤務。部署の先輩が異動になる。山本・hさん・なまけが三野(新)さんと沖縄に行って、戻ってくる。滞在中に撮られた1,200枚ほどの写真が共有される。以下、山本撮影。久高島で撮られたらしい海や岩、クバ(ビロウ)の写真。海岸で妙なポーズを取っているhさんの写真。海面を撮る三野さんの写真。でんぐり返しの姿勢で死んでいる(?)蟹の写真。岩の写真。岩を撮る三野さんの写真をいろんな角度から撮った写真。ヤドカリの写真。ヤドカリを手に乗せている写真。看板の写真。看板の文字を読む。《ハビャーン 琉球開闢の祖アマミキヨが降誕、あるいは上陸した聖地とされる。漁労の神役であるソールイガナシの神は、ハビャーンの森にいるタティマンヌワカダラーだといわれ、二頭の白馬として語られることが多い。》《ビロウの社 カベールの林の中には、ビロウ・クロツグやアダンなどの植物が生い茂り、様々な動物たちの住みかにもなっています》《久高島フボー(クボー)御嶽 久高島の中央西側にあり、琉球開びゃく神話にも登場する七御嶽のひとつです。昔から霊威(セジ)高い御嶽として、琉球王府からも大切にされてきました》《ご協力ください 久高島フボー御嶽は、神代の昔から琉球王府と久高島の人々が大事に守ってきた聖域です。神々への感謝の心と人々の安寧を願う場所であるため、何人(ルビ:なんぴと)たりとも出入りを禁じます。》枯れて色の抜けたクバが道の奥でうなだれている写真。ヤドカリの写真。ハイビスカスの写真。重なり合う木の葉の写真。撮った写真を見ている三野さんの写真。自転車に乗る三野さんとhさんの写真。蜘蛛の巣の写真。蜘蛛の巣に触れる手の写真。牛の写真。
《外間(ルビ:ふかま)・ウプグイ
正月をはじめ主要な年中行事における祭場である。
一九六〇年代のある時期までは〈外間〉という家とその前庭部分(タムトゥ座)で構成される祭場であった。外間根神(ルビ:ふかまにーがん)や外間根人(ルビ:ふかまにーっちゅ)という神役が出るべき家系とされ、外間家の一番座(ルビ:いちばんざ)の祭壇で祀られていた香炉(ルビ:こうろ)が村落祭祀の対象となっていた。一九六〇年代に、一番座の祭壇は外間家とは別棟の拝殿(ルビ:はいでん)(現在の建物)として祀られる形に変化した。建物の中央部には、首里城正殿二階の空間の大庫理(ウフグイ)・斉場御嶽の祭場の大庫理(ウフグーイ)と同名の「ウプグイ(大庫理)」がある。
また、向かって左側の建物(アサギ)は王家との関係を示す言い伝えが残されている。『遺老説伝』(ルビ:いろうせつでん)(十八世紀初頭に編纂)には、村落の始祖であるシラタルー夫妻の二女が王の妻となり懐妊するが、放屁したことをあざ笑われて島に戻り、ここで金松兼を出産したという話が収められている。金松兼(ルビ:かにまちがに)は、イシキ浜で得た「黄金の瓜子(ルビ:うりざね)」を持って首里に行き、王の世子として認められたという。》
石垣の写真。屋根の上のシーサーの写真。地面に落ちてねじれたガムテープの上に、たくさんの蟻が貼りついている写真。畑で燃えている火の写真。堤防の写真。《港内徐行》海辺の写真。フェリーに乗っている写真。洞窟? の写真。森の写真。《聖地 世界遺産 斎場御嶽 入口》《知念岬記念公園入口》雲の写真。石塔の写真。《農産物直売店》食堂の写真。電話をしながら横断歩道を渡る人の写真。モスバーガーの看板の写真。スマートフォンを操作している三野さんの写真。空港の写真。飛行機の写真。機内の写真。飛行機から見た夜景の写真。
工事現場の前で警備員が列を組んでフェンス前に並んでいるのを背にして、椅子に座りながらプラカードを持っている人たちの写真。手前にはおそらく機動隊員。旗や看板の写真。一部の文字はフレームに収まらずに途切れていたり、斜めに傾いていたりしていて読めない。画質のため小さい文字がほとんど読めない。拡大してかろうじて読める文字もあるが、推測の域を出ない。《CAMP SCHWAB》《辺野古新基地NO》《〔反射のため、読めない〕青い海》《美ら海を 基地に〔機動隊員の背中で遮られ、読めない〕たま〔同上〕(別角度からの写真では「し」を確認。「美ら海を 基地にしてたまるか」、か)》《新基地 ●●(「民意」、か)はNO》
ジープがこちらに向かって走ってくる写真。《いきもの おびやかす 基地は いらない 工事を止メェて 早くやメェ》《●●●●●(「沖縄県民よ」、か) 今こそたちあがろう》《ヘリ基地反対協》《予算をコロナ対策へ! 違法工事を中●●(「止!」、か)》《辺野古新基地建設反対 普天間基地の固定化を許すな!》《テント 等設置 禁止》《これまで再三にわたる指導にもかかわらず、依然として違法状態が解消されていないため、これらの物件を、直ちに撤去し、道路を現状に回復してください。》《張り紙、看板等の設置を禁じます。》《前方歩行者通行あり》《ここは、歩行者道路です。立ち止まらず速やかに 通行して下さい。》《取付物等があった場合は、 沖縄防衛局が撤去・保管します》《物を取り付けたりしないで下さい》《辺野古新基地建設NO! 違法工事はただちに中止せよ》《〔フレーム外のため、読めない〕海を守る〔同上〕への責任(冒頭は不明だが「海を守るのは 未来への責任」、か) 辺野古新基地NO!》《US MARINE CORPS FACILITY 米国海兵隊施設 BEYOND THIS YELLOW LINE IS US FACILITY AND AREA UNAUTHORIZED ENTRY IS PROHIBITED AND PUNISHABLE BY JAPANESE LAW この黄線の内側からは提供施設内です。 許可なく立ち入った者は日本国の法令により処罰される。》稲? ススキ? の穂の写真。花壇の写真。《手を触れないでください。お花を大切に!》
バラックのようなものが並んでいる写真。びっしりと並ぶ警備員の写真。《完成不可能な〔旗がねじれていて、以下読めない〕》《沖退教〔車両に遮られ、以下読めない〕》《島ぐるみ会議宜野〔同上〕》《新基地断念まで 座り込み抗議 不屈 2308日》《民意無〔別看板に遮られ、読めない〕やめろ!》《WARNING UNITED STATES AREA(FACILITY) UNITED STATES FORCES, JAPAN UNAUTHORIZED ENTRY PROHIBITED AND PUNISHABLE BY JAPANESE LAW 警告 米国区域(施設)・在日米軍 許可無き立ち入り禁止 違反者は日本国法律により罰せられる》《WELCOME 辺野古社交街》
市街地の写真。黒いビニール袋でつくられた土嚢の並んでいる写真。古いオートバイの写真。《ホステス採用 泡〔フレーム外のため、以下読めない〕》と書かれた看板の横で、まぶしそうな顔をするhさんの写真。《●●●●(塗装が退色していて、読めない。「CLUB」、か)CHAMPION》《NEW OKINAWA》《スナック ハワイ》《辺野古コミュニティーセンター》アメリカの国旗が描かれた廃墟? の横を歩くなまけの写真。赤く縁どられた葉っぱの写真。《(アナガー)マツンギャミヤーガー》《デンデン墓》砂浜の写真。ハマヒルガオ? の写真。フェンスの写真。《警告 このフェンス等に以下の行為を行うことは禁止されており、日本国の法令による処罰の対象となりうる。 ー物を取り付けたり貼り付ける行為 ー汚す行為、破損する行為、取り除く行為 違反行為は日本国警察に通報する》フェンス越しに向こう側の写真を撮ろうとするhさんの写真。集まった(集められた?)貝殻の写真。それを撮ろうとするカメラの写真。《ミーバカ》《駐車禁止 関係者以外車両進入禁止》《新基地建設阻止! 闘争開始より8年(2639日)の命を守る会の闘い と テント村 座り込み 6039日》《コロナウイルス感染拡大防止のため平日午前中のみ監視行動をしています》《勝つ方法は あきらめないこと》《民意は新基地建設NO》広々とした東屋? の真ん中に、事務椅子が二つ並んでいる写真。《戦死者御芳名〔以下、列挙される人名は読めない〕》《平和之塔》街並みを背景に、高台から写真を撮っている三野さんの写真。再建途中の首里城の写真。瓦礫の写真。《首里城正殿は、国王が様々な祭祀や政治を行った場で、古い記憶などによると創建から沖縄戦までに4回消失したとされています。》役人装束を着たフェイスシールドの男が御開門(うけーじょー )の儀式をしている写真。ライブ中継のスクリーンショット。《あとから来る君たちへ》《― 平和宣言 ― 時代の変化を見極める英知 この国の誇りを守りぬく勇気 そして青年として諦めない情熱 我々は理想とする真の日本建国に向けて 永遠に平和を創造し続けることを誓う》波上宮の写真。明治天皇像の台座の写真。フェリー? に乗っている写真。石垣の写真。緑色・ピンク色の砂粒の写真。蜘蛛と蝶の写真。自転車に乗る三野さんの写真。最初に見ていた写真へとつながっている気配を感じる。
空港の写真(沖縄に到着?)。自動車の写真。この自動車がくり返し出てくるので、三野さんが借りたレンタカーだとおもわれる。人気のない売店の写真。アーチ状のモニュメントの写真。《全学徒隊の碑》白い塔の写真。《旧ソ連ハバロフスク 2565.02Km ↑》砂浜の写真。《平和の礎(ルビ:いしじ)〔下部に記述が確認されるが、小さすぎるため読めない〕》人名が羅列された石碑の写真。ムカデの写真。ガジュマルの写真。二年前に撮影された(作者)の写真のスクリーンショット。宿の写真。スーパーで買ったらしい総菜の写真。惣菜を囲んでみんなで部屋の床? に座っている写真。オリオンビールの写真。夜の写真。夜の駐車場にいる猫の写真。クバを背景に妙なポーズ(クバを真似ている?)を取っているなまけとhさんの写真。石碑と折り鶴の写真(石碑の文字は読めない。「嘉數の塔」、か)。《トーチカ トーチカとは、ロシア語で「点」や「拠点」を意味する軍事用語で、防御(ルビ:ぼうぎょ)の中心となる陣地(ルビ:じんち)のことです。》《奉献》《再び戦争の悲しみが繰りかえされることのないようまた併せて沖縄と京都とを結ぶ文化と友好の絆がますますかためられるようこの塔に切なる願いをよせるものである》《青丘之塔》《●●●● ●●●●●●●(フラッシュを受けて、読めない。「観光名所 宜野湾嘉数高台」、か)》地球儀の皮をところどころ剥いたような建物の写真。《宜野湾市住居表示案内図》《米海兵隊基地 普天間飛行場》夜景の写真。朝の写真。《●(「事」、か)故 多発 前の車 確認》《●●(「西普」、か)天間 ●(「住」、か)宅地●(「土」、か)地区画整理事●(「業」、か) ●●●(車両に遮られ、読めない。別角度から撮られた写真で確認、「施行者」、か):●(別角度から撮られた写真で確認、「宜」、か)野湾市》切り崩された丘の写真。朝日に輝く雲の写真。《沖縄リージョンクラブ レストラン》日本とアメリカの国旗が丘の上に掲揚されている写真。
シチメンチョウ? の写真。《久志大川田市場》《久志岳ゴルフガーデン》《NO! ENTRY》《NO NEW BASE》戦隊ヒーローを模した写真。《●(支持体が損壊していて、読めない。「私」、か)達は古里を守り、子供達を守る 夢は必ず叶う 命ど宝 辺野古大浦湾を守り抜く》《辺●(「野」、か)古新基地建設を中止し、 予●(「算」、か)を新型コロナ対策に回せ! 希●(「望」、か)の海、大浦湾に杭は打たせない!》ピンク色に塗られた柱が目立つ、野球場のベンチのような写真(キャンプ・シュワブ近く? のバラック? の写真とおもわれる)。《普天間5年以内 運用停止嘘 日目》座り込みをする人たちが機動隊員と警備員に囲まれている写真。タンクローリーが並んでいる写真。警備員に向かって指をさしている人の写真。覆面姿でビデオカメラをかまえる機動隊員の写真。
以下、hさん撮影。港の写真。《AMERICAN VILLAGE》《RAT TRAP🐁 DO NOT TOUCH さわるな》《FORCE SUPPORT SQUADRON》《Please Scan Your ID for COVID-19 CONTACT TRACING》謎の絵の写真。資料館の展示? の写真。《15世紀頃 越来グスクの時代を巡る》瀬戸物屋の写真。《セトモノ店》資料館の展示? の写真。《黒人〔草に遮られ、読めない〕して〔同上〕は〔同上〕栄》シャッターが下りた店の写真。《部屋貸 福祉課 1日¥1,000より》《お願い この看板を動かしたら 元の位置に戻して下さい》アーケード街の写真。《〔青いビニールテープが貼られていて、読めない。「AMERICAN PIZZAMAN」、か〕》ボールプール用のボールのようなものがビニール袋に入れられて捨てられている写真。《Can’t Park here. a fine $50 or ¥5000》なまけが木々の奥からこちらに向かってくる写真。《第一外科壕跡》《母校にゆかりのあ●(「る」、か)相愛樹●(「を」、か) 思い出の樹としてこの地に植えまし●(「た」、か)》座り込み用の椅子が畳まれて置かれている写真。《ご協力を! イスは各自で お願いします》カバンに収納されたプラカードの写真。警備員が並んでいる写真。《CAMP SCHWAB》《ホステス採用 泡盛》廃墟? の写真。荒らされた室内の写真。フェンスにかけられた網の写真。《NO NEW BASE》妙なポーズを取るなまけを撮る三野さんの写真。木を背景にしたhさんの写真。蝶の写真。
《大里家(ルビ:うぷらとぅ)
久高島の旧家の一つで、母屋の東側に位置する神屋が拝みの対象となっている。大里家にまつわる言い伝えが二つある。
●イシキ浜に流れ着いた五穀の種子の入った壺を拾い上げた人物については様々な説があるが、その一つに、大里家の始祖であるアカッツミー夫婦がいる。大里家は「五穀世ウプラトゥ」とも呼ばれ、アカッツミーは五穀豊穣の神として祀られている。
●大里家の娘であったクンチャサヌルが、第一尚氏最後の王の尚徳王が久高島にやってきた時に恋仲になった、という言い伝えがある。それによれば、尚徳王が久高島滞在中に首里でクーデターが発生し、急きょ首里に向かったものの、時すでに遅しと悟って途中の海に身を投じた。大里家には戦前まで「尚徳王の簪(ルビ:かんざし)があったと伝えられている。》
《御殿庭(ルビ:うどぅんみゃー)十二年ごとの午年に行われてきたイザイホーや、村落の主要な年中祭祀の祭場である。広場の一角には、中央に神(ルビ:●●(小さすぎるため、読めない。「はん」、か))アシャギが建ち、神アシャギに向かって右側には村落の始祖の一人とされる百名シラタルーを祀った神屋(シラタルー拝殿)、左側には捕獲したエラブウナギ(イラブー)を燻製にする焙乾屋(ルビ:ばいかんやー)がある。
イザイホーとは、久高島で生まれた三十歳(丑(ルビ:うし)年)から四十一歳(寅年)までの女性が、祖先のセジ(霊力)を受け、島の祭祀集団に入る儀式である。イザイホーの時には、神アシャギはビロウ(クバ)で壁が作られ、入口には現世と来世をつなぐ象徴とされる“七つ橋”がかけられ、神アシャギ後方のイザイ山には女性たちが三晩籠(ルビ:こも)る“七つ屋”が建てられた。》
自転車に乗る三野さんと山本の写真。シーサーの写真。《えいこはなばたけ》岩に開いた穴の写真。年輪のような模様が浮かぶ岩の写真。錆びた櫛の写真。岩の上に乗っている白い粉の写真。クバを撮る三野さんの写真。石造りの祭壇? の写真。ガジュマル? の写真。《斎場御嶽への参道》
山本、hさん撮影のフィルム写真が60枚ほど共有されるが、力尽きる。なまけと三野さんの写真は共有待ち(?)。「日記」制作の合間に「三野新・いぬのせなか座 写真/演劇プロジェクト」の座談会の文字起こし修正。修正完了分を笠井さんが公開する。今月末に発表予定の原稿の確認。夕食。年明け締め切りの原稿用に取り寄せた資料を読む。

東京・高田馬場
鈴木一平