11月6日(金)

木々の葉が少しずつ赤や黄色に色づきはじめた。
日頃の暗い山肌もこの時期は、つぎつぎ灯をともすように
ぱっと明るく輝きはじめる、それがうれしい。

「滅びの前の明るさ」という、太宰の言葉を
紅葉の頃になると必ず思い出すが
暗い顔で散るより、目いっぱい明るく笑って
散るような、葉っぱが好きだ。

秋は木の実も熟れるが、日差しも熟れる。
特にはちみつ色に熟した、午後の日差しは
うっとりするほど、きれいだ。
壁や床にたっぷりこぼれているのを、見つけると
ジャムの瓶に詰めて、棚に並べて置きたくなる。

赤や黄色に日本の山が染まりはじめたこの頃。
アメリカでは、ちょうど大統領選がはじまって
赤と青がせめぎ合いながら、染まっていく大陸の
2色に塗り分けられた地図から、目が離せない。

接戦が続き、異様な熱気に湧く、開票所の様子を伝える
配信動画を、深夜から早朝まで見守っていて
目が痛くなった。

「STOP THE COUNT!」
「COUNT EVERY VOTE!」

二手に分かれた、トランプ派とバイデン派の
老若男女の応酬合戦は、ノリノリの音楽に合わせて
歌ったり踊ったり、ロックフェスのようで、熱いし楽しい。

一触即発の危険性も孕んではいるが、それでも、笑顔があり
楽しい、が混ざるところが日本と違うところだろうか。
政治的なことであれ、文化的なことであれ
我を忘れて、熱中することに

ファン(楽しい)がないわけがない。

じつはわたしも先日、国会前のロックフェスに参加してきた。
国会議事堂の前で、警護のお巡りさんとかいる場所で
何をしてきたか、というと

音楽にのって、マイクをもって
自分の詩を声に出して、読んできた。

楽しかった。

教室であろうと、ライブハウスであろうと
路上であろうと、国会前であろうと
わたしのやることは、いつも
いっしょ。

自分の書いた詩を、読む。
それだけ、だ。

じつは、お巡りさんがじわじわと近づいていた。
・・・・・・・・・
「君死にたまふことなかれ」が不敬罪に当たると非難されたとき
与謝野晶子は「歌は歌に候」と言い切った。
活動家としてメッセージを発信し続ける
デトロイトの黒人の女性詩人、ジェシカ・ケア・ムーアも
「わたしは、単なる詩人です」と答えている。

つまり、彼女たちは、こう言いたいのだろう。
「わたしは、わたしの仕事をしているだけです」

わたしも、同じく、問われたら、答えるだろう。
「これは詩です。わたしは、ただの詩人です。(Just a Poem, Just a Poet.)」

それ以上でもなく、それ以下でもないものとして
書いて、立って、読んでいる。

わたしの思いはいつも、それだけ。
そして、わたしは、わたしの好きな仕事ができて
とても、楽しい。

埼玉・飯能
宮尾節子