知らない部屋がひろすぎて
ぼくの心まで沈黙していた
移動を繰りかえして
範囲は狭まって
もうこれ以上行ける場所がなくなったら
またちがう部屋を探す
生まれ育ったところが
水にあふれていく
すべて液晶をつうじて知る
午後六時半に
つたう
地下鉄沿いにまっすぐ東へ
自生するラベンダーを摘んで
なにもない顔に近づける
液晶をつうじたものと
目前にあるものの差は
よりそわない
人類はみんな
やわらかく首をしめられていて
かぞえきれない腕が空から伸びて
首筋をつたう指先は夕暮れだった
北海道・札幌
三角みづ紀
三角みづ紀