7月4日(土)

知らない部屋がひろすぎて
ぼくの心まで沈黙していた

移動を繰りかえして
範囲は狭まって
もうこれ以上行ける場所がなくなったら
またちがう部屋を探す

生まれ育ったところが
水にあふれていく
すべて液晶をつうじて知る

午後六時半に
つたう
地下鉄沿いにまっすぐ東へ

自生するラベンダーを摘んで
なにもない顔に近づける

液晶をつうじたものと
目前にあるものの差は
よりそわない

人類はみんな
やわらかく首をしめられていて
かぞえきれない腕が空から伸びて
首筋をつたう指先は夕暮れだった

北海道・札幌
三角みづ紀