10月27日(火)

明け方、寒くて毛布を被っていると犬のことを思い出す。わたしたちのひかりの犬のことである。祖父が長い散歩に連れて行くと必ずなかむら商店で魚のすり身のてんぷらを買ってもらえるので喜んでいたあの犬は、いつしか大人びた顔つきになったが、春の眩しい庭で草を刈る母の背中を目指していっしんに駆けたり、雪の降る夜は玄関に入れられそこを守り、そのまま糸のように寝たりと、幼く、だが精悍な本能の眸を持っていた。川。あれから何度も四季が巡ったが、犬は輪転しながら駆け巡った。あたたかい。それは今朝のわたしの毛布まで、そしてこれからもずっと続く、とても長い散歩であると思う。

福岡・博多
石松佳