3月23日(火)

床下浸水になってどのくらいたつのだろう
引き潮がきたと思う日もあったが、
いつしか沼地になっていた
乾くことはもうない

ころげ落ちるかと案じたわたしだが、
なし崩しのほうもやって来て、
どこが波打ち際か
わかりますか

「波」と呼んだっけ
「いまが瀬戸際」とも言ったっけ

比喩とは、
そうだと思う喩えとは
本質だから
自然現象だったのさ、
ウィルスも

      ある日、0.1µmが生まれた
     極小の苔といってもよかった
    繁茂し、
   変異し、
  たちまち、
 地球規模の湿原が生まれていました

     地べたに
    大気に
   呼吸に
  肌に
 爪の垢に

その苔が
その根っこが
馴染むまで
しっかりと根付くまで
わたしたちはいのちがけだが、

特別なことではないのですよ
波だった
波打ち際だった
花だった
花の湿原だった
なんども見てきた景色だった

窓辺のいちりんも
ふるえ、
いのちがけで咲いていて

神奈川・横浜
新井高子