2月11日(木)

今朝
詩集を詰めた箱を渡した
相手は
この町で二年以上の間
詩のワークショップに参加してくれた人で
みんなで読んでね
、て本棚から選りすぐりの
おすすめ詰め合わせにしたんだった

古いマンションの
玄関の傍らには
ヒカンザクラの木が
毎年一月に花を咲かせて
この島では
スミレもイチハツも
年明けには会えて

咲いたら
散っても
ほのかな名残りが感じられて

引っ越しはからだがくたびれるから
ビタミンをと
柑橘や
向こうでよかったらと
この町で作っている辣油や
そして小さな手紙を添えた
クッキーの入った紙袋を受け取り

マンションの一階の窓ごしに
車で走り去るところを
見送った

これが
この詩が
沖縄に暮らしながら書いて
この島にいる間に発表する
最後の詩になるなんて

別れ方というのは
むつかしい
また来るから、て
いくら思ってもそう言っても
いなくなる

さよなら 沖縄

十年も住んだ
この詩が空気の日記のページの一隅に載る日に
ちょうど機上だ

沖縄・那覇
白井明大