1月30日(土)

標準的な無煙ロースターを設置した焼肉屋では3分ほどで店内の空気がすべて入れ替わるらしい。入店前に両手をアルコール消毒し、検温を行う。顔を映してピッとやるタイプの検温装置はわたしをなかなか認識してくれない。たまに、飛んだり跳ねたり両手をあげないと通してくれない自動ドアがあるが、検温装置はもっと頑固だ。無視されたわたしは近づいたり遠のいたりしてみるが、画面は緑にも赤にもならないので、すこし悲しくなってしまう。そういえば、最近すっかりみかけなくなったペッパー君はどうしてこの役目を担っていないのだろうか。労働ロボットの役割としてはぴったりだと思うのだけど、いまごろはみんなどこかの倉庫でうなだれて眠っているのだろうか。新型コロナのことも何も知らずに。ペッパー君を街のいたるところでみかけた頃は、その姿と疲れを知らぬ表情に労働ロボットのみじめさを感じていささかぞっとしたものだった。でもいま、こうして彼がいればいいのにと思う時には、もうどこにもいないのだ。わたしたちみんなもペッパー君みたいなものだったらどうしよう。焼肉ランチはとてもおいしかった。一日遅れの肉の日だった。

東京・つつじが丘
河野聡子