花がなくなると
葉が赤くなって
葉っぱが散ると
赤い実をつけて
きびしいなかにも
少しずつでも
うれしいを絶やさない
草木の
自然に学ぶことは
多い
うつむいて歩く
冬枯れの小道に
ぽつぽつ
ともる
藪柑子の赤い実
ちらちら
のぞく
龍の髭の青い実
あ
と見つけた瞬間の
我を忘れる、たのしさ
ひと
と会わないほうが
いいから、できるだけ
ひとの道を避けて、歩く
あのひと
と会わないほうが
いいから、できるだけ
恋の道も避けて? 歩く
この道は
だれの道だろう
一都三県に
二度目の緊急事態宣言が出た
東京の感染者は3日連続2000人を超えて
埼玉も500オーバーになった
ときどき吐きそうになる
はねあがる数字の向こうに人がいる
そのことに想像が間に合わなくて
涙とか嘔吐は
きっと
からだの緊急事態宣言なのだろう
緊急事態にはことばも間に合わなくて
白いマスクに隠れて、おとなしく
春を待っている
*
最多を更新する感染拡大・寒波による積雪被害と
重苦しいニュースが繰り広げられるテレビで
ひとところ、春の光が射すように
コロナ対策に成功している国として台湾
のことが紹介されていた
最年少で台湾初のトランスジェンダーの大臣
オードリー・タン氏の
ほっこりした笑顔を、画面いっぱいに広げて
ニュースキャスターにも笑顔は感染して
「台湾の政治家のことばには
血が通っている」と感想をのべた
日本と台湾のちがいは
なんだろう、と考えた
わたしを助けようとしたひと
と
あなたを助けようとしたひと
の
差ではないかしら
それとも、あなたの中に
わたしを見出せるひとと
そうでない、ひとの差かな
そうそう
タン氏が講演の最後に「わたしのだいすきな詩」として
紹介されていたレナード・コーエンのことばを
わたしの
新年のあいさつにかえて、ここに
「すべてのものには割れ目がある
そこから光が差す」
分断をつなぐのは
ことばのひかり
*
今年もよろしく。
宮尾節子