1月4日(月)

知事らは政府に
宣言の検討を要請したのだそうだ。
政府は専門家の
意見を踏まえるのだそうだ。
一方で政府は知事らに
要請前倒しの対策を要請していて
各知事も応じる構えを見せているという。

不思議の国の日本へようこそ。

誰が誰に
何を求めているのか、
求めた者と応じた者のどっちが
決めたことになるのか、なぜ宣言ではなく
宣言の「検討」なのか?

いや、そもそも強制力のない「宣言」って何なのだろう?

「人間宣言」
のようなものだろうか。
それとも「春の交通安全宣言」の方が近いか。

どちらにしても「法律」ではないという点では同じで
強制力がない代わりにそれを拒否したり
承認したりする術もない。

歌のように、空に向かってただ詠みあげられるだけの言葉たち。

ひらひら、はらはらと
舞い散ってくる暗黙の花びらの下で
男と女が
生まれたまんまの
白無垢の無名性にくるまれて抱き合っている。

ウィルス一粒すら
もぐりこむ余地もないと言わんばかりに
肌と肌をぴったり重ねて。
肋を軋ませ。

男の胸に顔をうずめて
うっとりと抱かれているのが知事で
仰向きに薄ら笑いを浮かべて
小鼻をひくつかせているのが政府だなんて想像するだに
身の毛がよだつが

案外、そのどちらかが
(ことによっては両方ともが)自分だったりするのかもしれない。
汝、自身を知れ、は難しい。まして、
しっかりと目を見開いて
自分で自分の寝顔を眺めることは誰にもできない。

花びらに打たれるごとに
ふたりの柔肌に真紅の痣が咲いてゆく。

床の間で、死は、
冷たい汗をかいている、
去年の売れ残りの柿の実みたいに。

愛欲と腐食の入り混じった
なんとも言えない匂いが胎児のように育ってゆくが

障子を開けても、窓は嵌め殺しだ。

横浜・久保山
四元康祐