12月20日(日)

私のことばに、私が隠れないように
と願う。

じゅうせいこそ
きこえないが
ちはいってきも
ながれてないが

いりょうは
ひっぱくし
げんばには
ついに
じえいたいがはけんされた

じゅうしょうしゃの
かずはひび
さいたをくりかえし
ししゃのかずも
ふえるばかり

けいざいは
しんこくなだげきを
うけ
でんしゃでは
じんしんじこが
ひんぱつし

じしゅくに
じじょに
じこせきにん
そう。
きょうせいは
しないが
ようせいはする

ふわっと
せなかをおされ

ころなのししゃ
より ついに
じさつりつがうわまわった

わるかったのは
わたしです か。

そう。
せんそうをしないためには
せんそうということばを
ぜったいに
つかわないことです

そう。
ふわっと

国のことばに、国が
隠れないように、と願う。

  *

この冬はラニーニャ現象とかの
影響で厳冬になる予測があたったのか。
大雪で立ち往生する関越道での、白い雪に埋もれて
長々と続く車の列をテレビで観た。

二日間も狭い車内で、人々はどんな思いで過ごしたのだろう。
そんな災難に思いを馳せながら、寒いのでマスクを二枚重ねにして
今夜はあったかい鍋だ、鍋だと食材の買い物に出ると

この大寒波のなか、おまけに寒風吹き荒れる夕暮れ時の
駅前でひとり立って、フォルクローレを演奏する濃い顔の青年が居る。
まじか、と驚いた。

手を震わせながら、ケーナやサンポーニャとアンデスの楽器を
取っ替え引っ換え、演奏している。

アンデスの笛の音色は、吹き渡る風の音色に似ている。
寒い師走のまちで、わたしはたちどまって、
南米からやってきた、風の音色を
聞いた。今を、聞くように。

暖冬のときの、エルニーニョ現象
厳冬のときの、ラニーニャ現象
異常現象とともに、日本にやって来る不思議な響きのことばは
ともに、南米生まれのことばだ。

スペイン語で、エルニーニョ(El Niño)は男の子。
ラニーニャ(La Niña)は女の子。
暖かい冬の男の子と、冷たい冬の女の子。

2020年12月20日、すでに第三波を迎えた日本の、新型コロナウイルスの感染拡大の波は、過去最多を日々更新し、東京都の感染者数は三日前に822人の最多を出した。重傷者も増え、医療は逼迫している。

日本の埼玉の飯能の駅前の師走の夕暮れの寒風吹きつける駅前で
今夜の鍋の食材費の一枚を目の前のプラスチックの箱に落としてわたしは
南米の青年に、リクエストしていた。

コンドルを、と

コンドルを飛ばせと
高く高く、遠く遠くへ。

どうか
コンドルを飛ばしてくれ
その笛の音で。

埼玉・飯能
宮尾節子