11月10日(火)

いつのまにか
マスクをはずすと
寒い、と感じるようになっていた

待ちあわせたカフェの
うしろの席から話し声が聞こえる

もう何か月も
家族以外のだれとも会わなかったんです
でも 今日は

ちいさなテーブルのうえに広がる
午後のひかり
わたしと
これからくるひとのための

窓ガラスのそと
ベビーカーが通りすぎる
雑踏のなかでゆいいつ
マスクに守られず
木枯らしにさらされている
赤ん坊の頬は
朝の水で洗われたばかりの林檎のように
ひかりだけを浴びて

だれかのために
じぶんのために
無防備でいる

そんな澄んだ強さから
目をそらしているうちに
すり減ってしまったものを
マスクで隠したまま

今日
わたしたちは
ふたたび出会う

東京・杉並
峯澤典子