10月15日(木)

ぶどう
     
きょう、つきたらずの、
ななひゃくぐらむ、のまごが、
うまれました。

すーぱーで、
きょほう、ひとふさ、はっぴゃくぐらむ、とあって……
なみだが、こぼれました。

にがつの、よていより、
ずっと、はやく
やってきた、じゅうがつの。

ぶどうのふさより、ちいさな、まごの
ひとの、かたちが
いとおしくて。

ひっしで、いきようとしている、ちいさな
あまやかな、いのちが、
ありがたくて。

(いろんな、かくごと、かのうせいを、きかされた
ふたおやを、おもって、
ひかりと、かげのさす、たんじょうの、しらせに――)
ぶじにと、ばかり、いのるよるです。

ぶどうより
ちいさいいのちが、こんなにも、いきようとしてる
のに どこかでは
おおきないのちが、いきるのをやめようと
してるなんて……

と、もらすと、かえりにたちよった
むすこが
ひとこと

ふしぎだね、といった。


これは、去年の今日ではありませんが
10月のこの頃に生まれた孫のことを書いた詩です

700グラム、と聞いた時わたしはどんな反応を
すれば、いいか、まったくわかりませんでした

700という数字の、いみとかたちがつかめず
かなしんでいいのか、よろこんでいいのかが
わからなかったのです

ぼんやりしながら、スーパーに行ったとき
果物の棚に、ツヤツヤと輝く巨峰が載っていて
800gとありました

それを手のひらに受け取ってみて
ああ、この葡萄より小さい子、と思ったとたんに
胸がいっぱいになったのでした

年が明けて、コロナによる感染症が流行して、まちは
世界は、一変しましたが
わたしたち家族は、じつは去年の10月から

NICU(新生児集中治療室)に面会するときに
マスクや消毒や腕まで洗うたんねんな手洗いは、
孫のおかげで、もう身についているのでした

おかげで、あちこちと、人の居る場所に
出かけるわたしですが、今のところ元気で
ぴんぴんしています

まご、ありがとう

700グラムから1000グラムになるまでがたいへん、たいへん
時間がかかって 毎日ハラハラの連続で、50グラム増えたと聞いた
だけでも、やったーと、大喜びしていました
(わたしなんか、ぐうたらしたら、1000グラムなんて、あっというま
だっちゅうに)

その孫も、今では8000グラムで、すくすく元気に育って
もうすぐ一歳になります
ありがとうございます、ありがとうございます、
ありがとうございます、と全方位にぺこぺこして
お礼がいいたい

生きようとする命を、生かそうとする命、ふたつの命が
いくつもの命が、この世界で
たいせつに、守られますように――

ひとつだけ、残念で、つらいことは……
病院を出ても、みんながまだマスクをしていて
まごに、たくさんの笑顔が見せられないこと

笑顔という、ひとの最高の、宝物が
隠されている世界で、おまえをむかえること
です

だから、ときどき、世界のマスクを外してきみに
教えてあげたい、大丈夫、隠れているのは
(ほらね)
ぜーんぶ、笑顔だよって!

埼玉・飯能
宮尾節子