日が西から
南へ回った
なにかを盗むように
そっと、すこしずつ
まぶしくなってきた
南窓の光には
透明で、情け容赦のないものが
隠れている
無力だった子供の私が
黙って砂のように
奪われていったものを
助長する種類の光
いのちを盗まれている夏は
声も上げられずに
叫びの口の形をして
最後の子供を産んでいる
百日紅の花房には
まだ緑色のつぼみがいっぱいだ
千葉・市川
柏木麻里
柏木麻里
日が西から
南へ回った
なにかを盗むように
そっと、すこしずつ
まぶしくなってきた
南窓の光には
透明で、情け容赦のないものが
隠れている
無力だった子供の私が
黙って砂のように
奪われていったものを
助長する種類の光
いのちを盗まれている夏は
声も上げられずに
叫びの口の形をして
最後の子供を産んでいる
百日紅の花房には
まだ緑色のつぼみがいっぱいだ