隣に座る人はみんな敵
吊り革にはつかまらず
電車が揺れるたびに
あっちにゴロゴロ
こっちにゴロゴロ
いつまでやるんだろう
いつまで続くんだろう
マスクを忘れて刺すような視線に刺されまくり
ボロ雑巾となって職場に着けば
そこには厖大な
ボロ雑巾の山が
嘘をつく不動産屋
役所を見下すハウスメーカー
書類をとっとと出せよ
コロナは理由にならない
現場調査は炎天の
下、路地裏には猫もあるかない
冷房のきいたお屋敷の居間の
猫になりたい
帰りの電車も敵中横断
沈黙の
ボロ雑巾たちのすり切れた背に
今日も同じ夕陽があたる
こうしてあまりに散文的な
一日が終わる
東京・小平
田野倉康一
田野倉康一