8月28日(金)

たとえば
ウイルスと人類はよく似ている
ウイルスが他の細胞をつかって自己複製するように
人類は他の存在をいつも利用しながら
地球という惑星に付着して倍々に増殖してきた
地をおおい 根をはりめぐらせ 空を埋め尽くし

ぼく一人では地球より遠い所へは行けないが
ぼくの遺伝子と模倣子は はくちょう座をめざしている

夏の日に
汗ばんだ手できみの手を握りしめて
そんなことをあつく語る
そう ぼくらは遠くへ行ける
きっと地球よりももっと遠くへ行くために
いまとりあえず必要なのは
クーラーが利いてて 冷たいソーダ水だってあるところかもしれないけれど
でも白鳥座へ行くためには
きみがいてくれないと困る
だから もう少し一緒にいませんか?

夜になれば 夏の大三角が星空にかがやく
遺伝子と模倣子が夜空を駈けていくのを見上げながら
ウイルスとか黴とか細菌とかヒトとか
寄り添って生きていくしかないのだから
ぼくらが消滅する日まで
もっと近くへ

福岡市・薬院
渡辺玄英