7月13日(月)

不安を日常で薄めながら
進められてきた私たちの七月

上下する関数の曲線を
ただの数字として解釈する
法律にせっせと小突かれながら
かつての会話のぬくもりや
築きかけのポイエーシスに
付きかけた錆を取り除こうと
人びとが力を込め出した
手指のその支点ごと
二百人を超える連日の
感染者の数が挫いてゆく

私にせよ先週
はじめて会った人からは
「感染が怖いので、完全オンラインにしなくては」という言葉を
だけど先々週は
久しぶりに会った知人の
「感染しても、たいした事なんて無いんでしょ?」という声を
同じ耳が聞いたばかりで

傾きの
その方位を計量しつつ
数えられる側にはいないはずだと
信じていた人たちを
x軸に組み入れ肥大してゆく
この座標が果たしてふたたび
翳りを延ばしてゆくのだろうか 

生存の証に座り続ける
私たちの食卓の上に
道辺が取り戻しはじめた
子らの交わす声の上に

四月が、五月が、六月が
放り出したしぐさを結局真似て
私たちのこの七月も
危惧にあるいはその逆に
交互の方位へ振り分けられる
やみくもな均衡を八月へと
譲り渡してゆくのだろうか

神奈川県片瀬海岸・江の島
永方佑樹