6月29日(月)

六月の雨のなか
ひとつの傘で帰った

これ以上ふれたら
ふかく傷つけ
傷ついてしまう
と知りながら

そんな出会いがあったことも
忘れようとしていた

もし
羽を痛めた小鳥を
ただ 守りたくて
てのひらでつつめば
その子はひどく驚き
逃れようとするだろう
死んでしまうほどの激しさで

でももう 安心して
だれも あなたに ふれられない
あなたも だれにも ふれることはできない

いま 離れていることが
あなたを守ることなのだから

雨の季節はまだ終わらない
それでも 今朝の天気予報は 晴れ

おおきく窓をひらき
もう会えないひとのもとへ
てのひらのなかの
見えない小鳥を放つ

ほんとうは
あなたも わたしも
どこにでもいけるんだよ

それを忘れるために ではなく
思い出すために
今日の空は
ある

東京・杉並
峯澤典子