6月13日(土)

人体発生学の講義5回と神経解剖学の集中講義12回
ことしはすべてZoomでやることが決まった
ところが!
すず1歳が40度の発熱5日間
ものすごく不機嫌でぐずりまくり
ひょっとして例のあれだといけないので
大学に出られない
そこで自宅から講義する

自分のバーチャル背景にはハワイの波打ち際が流れているから
どこから中継しても問題ないはず
台湾料理の紙箱弁当を食べてから
パワポの画面を繰りだしながら説明する
そして毎回10問のブラッシュアップテスト 自動採点されますから感想も書いてね
次々と侵入してくる1歳女子の泣き声、4歳女子の喚き声
感想「難しいです」
感想「わかりやすかったです」
感想「お子さんの声にほっこりしました」

赤ん坊の神経は頭のほうから少しずつ髄鞘化が進んでいく
つまりだんだんしっかりしてくるということ
一年になるとそれが完成し
きょう、下の子が
やっと立つことができました
おめでとう

大学の先生とお父さん
それに基礎医学の研究者、ときどき詩人
赤子は突発性発疹と診断される、そして治る
シームレスに相互乗り入れする
人生をひとことで説明するのは難しい、
難しいからこそ面白いのだ、六月の雨は
いつまでも解かれない秘密のように降りつづく
ふりほどけない
いくつもの関係性が
毎日毎日
ぼくらの上に積もってゆく

明晰に
歳を重ねつつある人々の心には
うつくしい毛糸玉のような
小さな塊がある
それが編み物をするときのように
くるくる解けながら
回っている

右回りなのか左回りなのか
誰にもわからない
そんな毛糸玉を
ぼくも持ちたい

東京・西荻窪
田中庸介