4月21日(火)

じぶんと
すべてのひとの
あいだに
空気をじゅうぶんに挟んで
買い物をする

去年と見た目はなにも変わらない
野菜や卵をかごに入れ
レジへ向かう途中
空っぽの棚がふいに現れる

そのたびに
なにもない棚の
見えないはずの
空気がふくらみ
息が
す、と とまる

消えてしまったものと
これから消えてゆくものを思いだせるように
ひと月まえと 昨日と おなじ場所で食事をすませ
おなじ町に住みながら しばらくは会えないひとと
LINEで少しおしゃべりをし

離れたまま つながり
近づいては また離されるわたしたちの
一日の終わりから
あふれだし
胸の まだ見えない一か所に折りたたまれてゆく
無色透明の さざなみ のようなもの

からだの奥深くに入りこむまえに
もどかしさ や さびしさ といった
ひとつの言葉のなかに
いそいで収めようとしても
さらさら さらさら あふれてくる
この消えない波を
ひとときの眠りの岸へと返すために
なにを すればいい

月が満ちるのを 息をひそめて待つように
ただ 湯を沸かし
ちいさな子の
陽と風の匂いのする まだやわらかな髪を
念入りに洗う

今日も
それ以外には

2020421minesawa

東京・杉並
峯澤典子