4月8日(水)

軒下でメジロが動かずに丸まっていた
夕方にはいなくなっていたから
気絶していたのかもしれない

鳥が巣を作るとへびが寄るんよね
それがいやなんよ
女たちがそう話していたのを思い出す
鳥みたいな音色だった

目の前のことに触れたくて
今年初めての山椒を摘んだ
まだ棘すらも柔らかくて
冷たくて甘い香りは
少し気取ってからんでくる
水洗いして絞った後の手は
しばらく冷たいままだった

のどを固くする時間が増えて
大きい誰かの正しさを
窓の向こうの散りゆく桜に乗せる
風に浮かんだ花びらは
空一面にシャボン玉のように広がって

ああ
泡よりも早くて、かすかなことが
息をのむだけで残ってしまう
あの一粒たちが残ってしまう

山桜はピンクの膨らみで
山をぼふぼふと爆発させる
春は山笑うと言うけれど
本当に笑っているね
山に笑われているね

始まりの前に
積み重ねた問題に向かうきみと
隣り合う

きみは相変わらずため息をつき
頭を掻きむしり
硬直もするけれど
それでも逃げなかった

分からなさを繰り返しても
きみは泣かなくなって
わたしは怒らなくなった
わたしたちは育っていると思う

一粒になるよ
あの桜の花びらのように
一粒になるよ
そこからじゃないと
わたしたちは手もつなげない

fujikura

大分・耶馬渓
藤倉めぐみ