4月5日(日)

Society 5.0が攻めてくる
すべてがアイティー化された情報化社会

きょうからはじめましての講義はバーチャル化
体育実技もバーチャル化
期末試験もバーチャル化

すべてはバーチャル空間に移されまして
Zoom, Zoom, Zoom, ……

春一番に
解体される大学
概念としての大学
が残るか

Zoomソフトウェアによるバーチャル講義
についてのZoomによるバーチャル講義をやりましょう
情報システムエンジニアはものすごいハイテンション
学部から学部へと飛び回る

まったく
すごい風が吹いている

3つございますGoogleメールアカウントはこのように使い分けます
ログイン間違えると所定の機能が発揮できません
Zoomでも出席をとる方法があるんですって
え、知らなかった、そうなんですか、教えてください
そうしてPowerpointの画面をボタンは送信する、これ

ウイルスの脅威はフィジカルの最たるものなのに
ますますバーチャル化する観念
その地平。空間。事物。

連携する、
すごく楽しい、
だが
コンセント一本ぬかれたらすぐに終わってしまう
Society 5.0
(バックアップ電源はありますけどね)

それは
呼吸がとまったら
まっさきに終わってしまいそうなおれたち、
おれたちのつむぐ
思想も

この春のはかなさの
ほろ苦い
タケノコのような
比喩
として

東京・本郷
田中庸介



4月4日(土)

どうして部屋が散らかってても平気なの
、て

週末の朝から昼にかけて
ぼくとうたの怠惰にして割とおだやかだった
春休みの日々を
家族会議にかけることになって

きみは眼鏡ごしに
しごくまっとうな怒りと疲れを目に浮かべ
リビングの真ん中に
夕べからずっと積まれてる洗濯物を
見たり見なかったりしている

畳むのは
うたの仕事ではあるけれど
仕事部屋の畳の床に
本や資料や書類を積んでは崩れさせっぱなしで
今週も約束の掃除機をかけ忘れた
ぼくとよく似て
気が向いたらやるのは
言われるまでしないのと同んなじだから

きみだけが心底から
土曜日の家を
気持ちのいい空間に変えたいと願ってる

ぼくはといえばこの島の先行きが気が気でなくて
四月の今日の清明からはじまる
シーミーという親戚ぐるみ島ぐるみの供食の慣らいが
願わぬ結果を招きはしないか案じていたら

今年のシーミーは中止です
、て従妹から連絡が届いてた

それぞれ得意な家事をしようと
どうにか会議が
笑い交じりにまとまった後で

沖縄・那覇
白井明大



4月3日(金)

毎朝 起きる とどこおりなく
洗濯機がまわって
食器を洗う手が
とても 乾燥している

ほら 部屋のなかで
わたしたちは常に凝視している
いや そうじゃなくて
ほんとうにちがう、うるさい

失せた食欲と
ずいぶん乗っていない地下鉄
飛行機に乗ったのは
たしか一カ月まえで

検討したり 意向を示したり
方針をかためたりするあいだ

ようやく雪解けて
かるくなった足が
町へ向かわない
明日からも 静かな週末

次第に
こころがちいさくなるから
植物に水を与えて 触れる
きみたちはつよい

北海道・札幌
三角みづ紀



4月2日(木)

今朝も
スマホのアラームが鳴り

5時に目覚めた

すぐ
腕を伸ばす

アラームを止める
しばらくそのままで

天を見ている

それから
女と犬のモコを起こさないよう
そっと
布団をずらす

ベッドを
抜けだす

トイレから戻ると

すぐに
本の部屋の窓を開けて
空気を
入れかえる

昨日の
4月1日の夕刊に
「世界の死者 4万人越す」
と見出し

新型肺炎の死者だろう

その夕刊に
谷川さんの「からっぽ」という詩が載ってた

詩は
からっぽの
平らな皿にのせた
空気か

窓を開けて
朝の風を入れた

静岡・用宗
さとう三千魚



4月1日(水)

玄関先の
古紙回収のトイレットペーパーが盗まれた
志村けんが亡くなって三日目
追悼番組を見て笑った
これからどうなるのだろう
都立高校の新学期はもう一ヶ月伸びるそうだ
学校に行かない子供たちは着替えもしない
加害者になるなという声が大きくなり
都知事は夜の酒場に行くなといい
カラオケとライブハウスに行くなという
当事者には処刑の宣告に聞こえるのではないか

新型コロナウイルスの致死率は2~3%とされていて
これは騒ぎがはじまった当初と変わらない
変異したのは我々で
遠くの2~3%と
すぐそばの2~3%では
こんなにも違うのだ

ことしの桜は早々と咲き
ふしぎと散ろうとしない

全世帯にマスクを2枚ずつ配ると
マスク姿の首相が発表した

今日はエイプリルフール

東京・世田谷
松田朋春