3月22日(月)

昨日 二度目の緊急事態宣言が解除され
近くの公園の
さくらもひらきはじめた

去年とおなじように
今年も

だれかと集まることはなく
満開の花のしたに
ひとりで
ほんのすこし立ちどまるのだろう

二十数年まえの三月のおわりに
うまれてはじめて
東京で
ひとりで
暮らしはじめるまえに
家の近くの
さくらを見あげた

そのとき
手のひらのなかに
花びらがいちまい 落ちてきた

さよなら
げんきでね

聞こえなかったことばだけが
いつまでも
耳にのこるから

わたしは
今年も
通りすぎるだろう

ひとりきりの
だれかの
手のひらへと
無数のことばが
降りはじめる
まあたらしい
この
春のなかを

東京・杉並
峯澤典子