2月24日(水)

昼間になると
にこにこ笑ってるような
暖かい日差しがあたりいっぱいに
こぼれて

春はもうそこまで来ていると
告げてくれている

義母が倒れて二週間になる
このところのきびしい寒暖差が
老齢には響いたか

脳出血だった

行かない日だったので
悔いが残った

覚えて置け
という詩を書いた

覚えて置け

行かない日があった
一日だけ行かない日があった

覚えて置け
そんな日に、必ず

愛は倒れるのだ

コロナ禍なので、面会ができない。

ナースセンターに問い合わせると
名前は言えるように
なったとのこと、かおがみたい

今日は留守宅の
植木鉢の水遣りに行った。
テレビをつけると音量が大きくて飛び上がった

少女の頃には
「桜貝すみれ」というペンネームで
小説を書いたのよと前に打ち明けられたことがあった

噴き出しそうになった乙女な名前だけど
本名は「皿海すみこ」なのでまんざら
嘘っぱちでもなかった桜貝の
(ずいぶん耳が遠くなった――)

すみれさん、すみれさん、
すみれさん、すみれさん、

もうすぐ春の、すみれさん

お家に戻って、咲かせておくれ
(明るい春の縁側で――あははとわらう)
花の笑顔を、もう一度。

埼玉・飯能
宮尾節子