2月1日(月)

先月の実績資料の作成。原稿の締め切りが立て込んでいるため、片手間で案を考える。そのせいで午前中の仕事があまり進まず、気が沈んでくる。海苔巻き。Kさんから連絡が来る。――鈴木さんの探していた本を見つけた、今日でよければ渡しに行ける、とのこと。夜に中野駅で待ち合わせをする。午後になって部屋に宗教の勧誘が来る。20分ほど対応したあと、チラシを渡してきたので断る。代わりに名刺を求めると、これが名刺代わりだといって、チラシをもう一度渡そうとしてきた。
――いやちょっともらえないです。
――じゃあここで読み上げますから聞いてください。
――寒いですよ……。
――ドアを閉めてください! いわれたとおりに閉めると、ドア越しに声が聞こえてきた。内容はうまく聞き取れなかったが、チラシに書かれた文章を読み上げて、その解説? をしているようだった。入浴。忌引きで休んだ会社の先輩のことを考えているうちに、祖母の死が母にとっては親の死であることを、3年たって唐突に気がつく。髪を乾かしてドライヤーの電源を落とすと、声が聞こえなくなっていた。
21時過ぎに中野駅へ。改札を出て右手にKさんがいた。本の入った紙袋を手渡される
――おつかれ~。なんか来てもらってわるいね。
――助かりました! こんなタイミングじゃなければごちそうしたいんですけど。
――やってないからね。
コンビニで缶ビールを買って、今書いている原稿の話をする。Kさんが、――そしたら他にもっといい本あるかも、というので、Kさんの家に行く。中野ブロードウェイを過ぎて左に曲がり、住宅街の方へ。
――あ~そういえばさ、このあいだ前に住んでたやつが家に来たんだよ。
――え!
――ふつうに怖かったよね。Kさんよりすこし年上(35くらい)の男で、五年前に会社をやめて地元へ戻ったという。東京へ行く用事ができたから寄ってみると、入り口の脇に好きな小説家の本がまとめて置いてあったので、おもわず鳴らしてしまったらしい。
――申し訳なかったな、捨てるやつだったから。
――来たついでに寄るって発想がヤバいですね。
――実家が本屋やってるらしいんだけど、今度あなたの本を注文します! っていわれた。
部屋に入ると、玄関に解かれたビニール紐と、その上に本が積まれてあった。Kさんが本棚から何冊か取り出して、紙袋の中に入れてもらう。手洗いを促されたものの、水を張ったままの食器の上で手を洗うのは気が引けた。ケチャップ系の料理をつくって食べた形跡がある。Kさんの部屋に住んでいた頃、男もここで手を洗っていたのだとおもう。
Kさんと原稿を書きながら酒を飲んで、0時過ぎに帰る。家まで歩いて帰ろうとして、新宿にたどり着いてしまう。Kさんの家を出てから、2時間かかって家に着く。途中でコンビニを見つけるたびに酒を買って飲んでいたせいで、横になったとたんに吐き気がした。

東京・高田馬場
鈴木一平