すぐに溶けてしまう
かたちを崩して
逃げないで、と額が叫んだ
アラームが鳴るまえに
灯油ストーブを点けて
フライパンをのせる
黒くて重いもの
たっぷりの油に 生きる
ための適度な刺激
ニュースでは
会ったことのないひとが
ひたすら謝罪をしていた
ふたりの日常の音は
静謐な氷点下で
愛情から情を剥ぎとって
愛がいい 愛だけでいい
じつは陽性で入院していたんだ
という友達の心配はした
会ったことのないひとの
不倫への謝罪には興味がない
たった一文字を
いつも剥ぎとっている
北海道・札幌
三角みづ紀
三角みづ紀