11月23日(月)

中旬くらいから
四百人、五百人と感染者が増え出して
そうして迎えた十一月の三連休
江ノ島は観光客で大賑わいだ
政府がGo toにストップをかけると
数日前に言ったものだから
ようやく取り戻した享楽に
自粛をかぶせられるその前に
人びとは休暇をむさぼっている

とはいえ
私たちの善良に疑いはない
遠くの人たちの不幸の為に
私たちはいつでも祈ってみせる
ふたたび中止になってゆく
イベントの報せを聞いては嘆き
感染者の急増加に胸を痛めて
身近な人が罹らないかと
食卓の上で心配しながら
Go toトラベルで安く訪れた
京都土産の阿闍梨餅を
熱いコーヒーと一緒に食べている
それが我々の善良だ

最近のどの週末よりも
いっそう沢山の人々が
江ノ電や小田急の改札から
列車が着くたび続々出てきて
弁天橋を渡ってゆく
回廊のこの混雑を
確か前にも見た事があると
四月十二日に自身が書いた
一番最初の「空気の日記」を
さっき一度読み返してみた

「つい先月の
三月の三連休も
島へと繋ぐ弁天橋は
にぎやかな群れで混み合っていた
したしく呼気を触れ合わせ
ひとびとが笑顔で渡ってゆくのを
やさしい風景の快復なのだと
わたしもここでながめてた、その微笑の
誤謬への加担」

三月の連休の後に
私たちに起こった事が
いま一度また起こるのだろうか
欧米の都市が再びロックダウンしてしまっているように
この国でも
もしかしたら
(あるいは)

いずれにせよ
幾度だって日常をあやうくしてゆく
私たちのこの善良は
まったく遺伝的なものなのだ

だから
不安に打ち据えられながら
希望にうっとりと束縛される
私たちはこれからも幾度だって
史実を安易に模倣して
生存と享楽とを秤にかけては
時代を過酷にさらしてゆくのだ

神奈川県片瀬海岸・江ノ島
永方佑樹