11月18日(水)

この時期にしてはめずらしく気温が上昇し、
わたしたちは
うっすらと汗ばんでいた

ニュースが
気温のほかに様々な数字を伝えている
こうなることは
前からなんとなく分かっていたが
実は少しも分かっていなかったのだ

カミュが『ペスト』に
「なるほど、不幸のなかには抽象と非現実の一面がある。しかし、その抽象がこっちを殺しにかかって来たら、抽象だって相手にしなければならならぬのだ。」
と書いたことを
ぼんやりと思い出しながら
歩いて帰ると

繊い月も
ぼんやりと
雲の間に出ていた

ランベールの「あなたは抽象の世界で暮らしているんです」という言葉と
リウーの
「人間は観念じゃないですよ、ランベール君」
との言葉
彼らの議論が
夜の空気に
ささやかに響くのである

※引用は全て アルベール・カミュ 『ペスト』 宮崎嶺雄訳 新潮社 2013年 による。

福岡・博多
石松佳