この日にあったことは
書けるようなことでは
ないのです
へとへとにくたびれ果てて
それでもどうにか
難所をくぐり抜けて
夜
前日雲がかかって見られなかった
十五夜の翌日の満月を見ようと
近くを散歩しては
きれいに出ている月を眺め
龍潭のまわりを二周
ゆらゆらとどこにも力の入らない
足腰をゆらめかせながら歩いた
この日記の当番の〆切のことなど
すっかりと頭から抜けていて
気づいたのはいま日曜の夜で
おとといの痕跡を見返すと
こんな言葉をSNSに書き残している
「いちばんたいせつなものは、目に見えないものだから、目に見えるものは手放そう。そうするしか、一つの指輪を葬る手立てはないのだから。」
(午前二時頃)
「というわけで先ほど手放しました。ぶじに火口に溶けていきますように。南無…」
(午後一時二十分頃)
すごくすごく長い旅をしていた
この日は旅のある意味で決着をつけるような日だった
詩を書いてる余裕は
なかったんだな
いつか書くことがあるのかもしれない。ずっとないかもしれない。
一日の終わりに缶ビール一本飲まないでいられたけれど、思い立って、保存食の箱にしまわれているカップラーメンを取り出し、湯を沸かして、作って食べた。
沖縄・那覇
白井明大
白井明大