9月11日(金)

時代はますます加速して
あそこにあるあの機械を使うためにだけ
京都にまた日帰り出張をすることになった

東京駅を午後に出て
新幹線の終電で帰る
「のぞみ」だと東京から2時間15分
13,970円
高いけれどとても近い
ICカードで乗ると指定席はコロナでがらがら
両側の窓際に乗客がひっついている

炭屋だか柊屋だかに
親類の文士が泊めてもらったとき
犬の頭をなでようとして女将に(この子は
京都弁でないとわからない、から、
かしこいなー、(か、にアクセント)
かしこいなー、(か、にアクセント)
とほめてやってくださいとご教示をいただき
その通りに褒めてみたら犬がやっとなついた
というような逸話も今は
昔のことである

深沢七郎に
「銘木さがし」という掌編がある、これは
銘木好きの人たちに触発されて
気がついたら
京都まで行ってしまうというお話。
中公文庫の
『言わなければよかったのに日記』
で読めますよ、

志賀直哉の「ある一頁」という小説も
京都に入ることを書いている。そこには、
 
 「何処ですか」といふのに、
 「よ条小橋」(よ、に傍点)と云つたら、
 「四条(しじょう)小橋ですか」と直ぐ云い直された。彼は何だか
 みんなが寄つてたかつて乃公を侮辱するのだ
 と云ふ気がしてきた。

とある。結界にひっかかっている。
読めなかっただけなのに――。

南北に地下鉄が走る烏丸通、
そこから東に向かって
鬼のように
東洞院、高倉、堺町、柳馬場、富小路、麩屋町、御幸町、
と来たら寺町通。それから新京極があって河原町。

これに直行するのが
東西に地下鉄が走る御池通、そこから南に下がって
姉小路、三条、六角、蛸薬師、錦小路、そうして四条
四条通りには阪急京都線が走っている
昔の新京阪電車である

この小宇宙。
(全部、読めましたか?
(ジンジャーエール飲みたいな、

はい、おおきにありがとう
京都はことばで千年も結界を張っている

京都
田中庸介