8月10日(月)

今日は祝日だ。
えっと、何の日だっけ

山の日。
祝日法第2条によれば「山に親しむ機会を得て、
山の恩恵に感謝する日」とある。

本来は明日(8月11日)が
今日に(特措法により)なったのだそう
開催予定の東京五輪への特別措置で、ということだ。

夏の川面を船に曳かれて――
お台場に置かれていた
五輪の輪がしずしずと退場していった

山あり谷あり五輪延期ありの、今日は山の日。

じんせい
なにがあるか、わからない。
そして
なにがなくなるかも、わからない。

夏の川面を船に曳かれて――
五色の輪がしずしずと退場していった
「また、戻れると良いけれど」の声に見送られて。

Go to(いけ)と
Stay home(おうち)のことばの扉が
ひらいたり、とじたりしている。

憂鬱になれば、きりがない。
こうなったら
腹をくくって、もしかしたら何百年に一度の
災難に当たったことを、宝くじのように愉しむのも
手ではないか。

どうせ、脳には
喜びと悲しみの区別はつかないらしいし。
胃袋の暗がりに、
フランス料理とカップ麺の区別がつかないように。

いよいよ、恐怖はひとを変容させはじめた
ようだ――
「帰ってくるな」と玄関に手紙を投げ込むひとと
「マスク不要」と駅前で音楽フェスをするひとと

珍種はやがて新種になるのだろうか。

ひとの普通がゆれている――
ゆれてるときは動かない、葉っぱにとまった
虫たちは。

***

こしあんの好きな義母に、評判の水羊羹を
商店街で買った。

和三盆ですか?
いや効かせ程度です、全部ワサでやると
くどくなるから。

夏祭りなくなりましたね、秋はどうかな。
中止になりましたよ、16万人も出るからね。

お店は、痛いですね。
仕方ないですよ、感染広がってるから。

「仕方ないですよ、***だから」

きっと、同じことばが75年前にも
ここを、通った。

***

夏草は元気いっぱいだ
なんでや
と、問いたいぐらいだ
なんとか
と、頼みたいぐらいだ
元気の秘訣を。

それでも
じっと目を凝らせば

夏の葉も病んでいた。

埼玉・飯能
宮尾節子