8月2日(日)

この陽射しを
もう疑わなくていい
つかの間かもしれないと
身がまえなくていい

山に来た六日まえ
特急の雨の窓には まだ
葡萄畑の緑がけむっているのに
空調の効きは 覚悟が必要
何枚はおっても からだがこわばって

動けなくなる四肢を
動いてしまう心に
かかえ続けるということを思った

静かな死を願ったひとと
その願いを叶えたひとは
もう一日をこらえようとする仲間を離れたとき
何にうつむいていたろうか

いつでも銃爪を引ける拳銃を
枕元に置いておけたら
それを引かない自由を選べるのだろうか

自分ならどうするか
と 問わない者はいなくて けれど
垂れ込めた雲の下では 
ちがうこたえを出してしまわないように
考えてはいけないのだったから

明日月曜の数字は きっとまた増えるけれど
林では 蝉たちがいっせいに鳴き出して
どん底を見た力士が 誉れを手にして
路の上に 光は強く動いてゆく

昨日から鰐している夫が 電話をくれて
どこかで財布を無くしてさ というぼやきが
夏の響きだ

八ヶ岳
覚 和歌子