7月31日(金)

梅雨は明け
七月最後の日
夏休みを取得して
美術館に来ている
入り口にはカメラが設置されており
モニターにわたしの姿が映し出され
その上に体温が表示された
わたしは36.1
わたしの後ろの男性は35.9

館内に入ると
椅子が二脚あった
一ヶ月前であれば椅子は全て撤去されていたが
一時期落ち着きを見せていたから
二脚だけ設置されたのだろう
また明日にでも撤去されるかもしれないと思い
意味もなく椅子に座った

館内の壁には東南アジアの作家が描いた
大きな地獄極楽図が飾られている
地獄では
炎の牙を持つ獣の口から炎の獣が現れ
無限に続くように思われた

その炎はおそらく
わたしが持っている
36.1度の熱に通ずるものだ

ずっと椅子に座っていた
ガラス窓の向こうの
夏雲が眩しすぎる

福岡・博多
石松佳