7月23日(木)

なんの気なしに
手をのばした青葉の裏がわで
みっしりと、
おどろくほど規則的に赤茶の斑点がならび、
覗きこめば
どの葉も、どの葉も、どの葉も、

そのとき四歳だった
熱がでて、寝かされていた
ふと起きて、母の鏡台のまえに立てば、
むごい斑点が
顔にも、首にも、手足にも、
口紅をぬれば、おそろしくはみ出したっけ

泣いても、泣いても、泣いても、
見てはいけないものは消えなかった

この怖さはなんだろうか
この感染症の怖さはなんだろうか
と 問いかけて、
浮かんできたのだ、こころのこのマダラ模様が

ほんとうは、見えているんじゃないか、
ウィルスを
赤茶色のその斑点を
突風が運んできた瞬間だって

見えているんだよ、
だから
怖いのさ

泣いても、泣いても、泣いても、
消えなくて

顔にも、首にも、手足にも、

神奈川・横浜
新井高子