なんの気なしに
手をのばした青葉の裏がわで
みっしりと、
おどろくほど規則的に赤茶の斑点がならび、
覗きこめば
どの葉も、どの葉も、どの葉も、
そのとき四歳だった
熱がでて、寝かされていた
ふと起きて、母の鏡台のまえに立てば、
むごい斑点が
顔にも、首にも、手足にも、
口紅をぬれば、おそろしくはみ出したっけ
泣いても、泣いても、泣いても、
見てはいけないものは消えなかった
この怖さはなんだろうか
この感染症の怖さはなんだろうか
と 問いかけて、
浮かんできたのだ、こころのこのマダラ模様が
ほんとうは、見えているんじゃないか、
ウィルスを
赤茶色のその斑点を
突風が運んできた瞬間だって
見えているんだよ、
だから
怖いのさ
泣いても、泣いても、泣いても、
消えなくて
顔にも、首にも、手足にも、
神奈川・横浜
新井高子
新井高子