7月19日(日)

STAYとかHOMEとかGO TOとか
わたしたち犬みたいだよねって
誰かが言って本当にそうだなって怒りながら笑ったけど
そういえば犬を飼ったことはない
猫も
小鳥は子どもの頃に家で飼っていたことがあって
でもあれはどちらかといえば弟の小鳥たちで
おいで と呼んだことはあっても
来い と命じたことはない
かわいい小鳥の1羽は逃げてもう1羽はどうしたのだったか
たぶんわたしが実家を出たあとに死んだのだ
不明1
死1
は 埋められているあいまいなわたしの記憶の庭の奥深く
おいで は言えても
来い とは言えない
命令形は使い慣れていない
やめてください は言えるけど
やめろ と言ったことはたぶんない
きのうコロナに感染した女性が同じ舞台を何度も観に行っていたことを嘲笑するように責めるニュース的なものが目に入って何もかもを振り払いたい気分になったわたしだって好きな舞台なら体力があってチケットが取れれば通いたいし同じ映画を20回くらい映画館で観たことだってあるしどこの誰だか知らないけどあなたは何もわるくないおかしくない好きにしていい命じられることに慣れなくていいんだって
言いたい
雨は
今日やっとやんだ
涼しい青空に飛行機の轟音
オリンピックが何ごともなく今夏ひらかれることになっていたら
暑さで人がばたばた倒れるような気温じゃないのを
せめて寿ぐ気持ちになれただろうか
明日はまた雨になる予報
振り払うようにここから飛び立って
逃げることを夢想してみる
新幹線も飛行機も使わずにGO
できたとしても
降り立てる場所は見つからない
1 は
埋められてしまう
あいまいな「東京都で新たに188」という数字の奥深く
そこからどこへも届かない声で
命令したい
光れ

東京・神宮前
川口晴美