6月16日(火)

春の季節の外を忘れていたからか夏の甘みが鼻に鮮やかだ。これこそが草いきれ。雨の後の強い日差し、田植え直後の整列した苗を見ても私は弱りの中にたたずんで、ああ、この力の入らなさは怒りなのだなと思う。

どうせという言葉に触れてしまった。見知らぬ君は、怒っているのに、どうせという言葉に吸い込まれて、君はそれを吐き出してしまった。君は意志を示すことすらしないと、怒ったまま言う。そうさせたのはあなたよりも先に放り出されたわたしたちなのか。

熟しきった梅のぷわんぷわんとした匂いや小さなアマガエルの午睡を通り過ぎて、窓辺につるされた七夕飾りを見る。
「やきゅうせんしゅになりたいです」
ねがいごとはいつだって光り輝くものだと知る。まだ願いの書き方が分からない私は面と向かって息を吐き、息を吸う。態度を示せますようにと。

有象無象を抱えた境界線は
夕暮れから青が滲んで
虫が高らかに鳴きだす
夜風が 声が
溶ける

夜は黒くならずに青くなって
虫の声に重なって
青が濃くなるほどにカエルの声も響きだして
音が空と土を繋いでいく

青いまま 青いまま
溶けあって
山並みも川音に溶け合って星が浮かぶ頃になると
ぽっ と
あれは蛍

星がおりたんだね
魂がゆれたんだね
躍りあってるね
その境目が夏だね
命の溶けた境目が夏なんだね
混ざりあうことが夏なんだね

大分・耶馬渓
藤倉めぐみ