とつぜん夏がきて
雨が降る日々が訪れて
季節の配列が行方不明
二ヶ月ぶりの地下鉄に乗って
あの庭で待ち合わせた
はまなすの花の咲く庭
つよい日射しのなかで
ぼくたちが笑っている
そうして こわくなる
「誰か、もう大丈夫だって言ってよ」
大切なものが
目に見えないならば
大切なものに
ころされてしまいそうだ
しろくて滑らかな
石に向かって
おなじく滑らかな足で
少女が駆けていく
現実よりもおそい速度で
花言葉は 悲しくそして美しく
ぼくは悲しさを求めていない
北海道・札幌
三角みづ紀
三角みづ紀