5月21日(木)

深夜に
ことばが立ち上がる

論文の直しというのはとげぬきのようなものだと思う
(1) はーい賛成
(2) 反対

どちらですか

深く呪われている
北のみずうみの底に
燃えあがる陽炎のような何かがある

どうせ自分は大したことはない
自分はじつにスゴイもんだよ
この二律背反の気迷いの中から
薬草の根っこのような
熱い本質を引っこ抜く

まずは文法がめちゃくちゃ
図表の番号がめちゃめちゃ
話の筋がどこかに行って
図の縦横があわさっていない
あきらかに入れるべきことが欠けている

表面の雑草を刈るように文法を直していく
するといま見えてくる地肌の粗さ、それを遠くからトングでつかんでこね回す
ぴたっと当てはまるとかちっと音が出るよ、ご名答
最後まで行ったら鋸でまっぷたつ
ハサミでじょきじょきとプリントアウトを切ってセロテープとホチキスで貼り合わせる
そしてコピーをとって
写メをとって
メールで転送

返ってきたらすぐにプリントアウト
ハサミで切り刻む
のりでとめる
またスキャンして
メールで送ろう

沼のように深い絶望が
身体のゆがみとなってことばの水面を泡立たせる
ついまた見落とされる全体の構成
背骨のバランスがとても悪い
錯誤、混乱
そこまで自己批判しなくていいのに
ものすごくものすごく
悲劇的な考察

それを
ひとつずつ
ご供養する
ように

のしかかられた肩の重みが
すこしずつ
楽になる
ように

在宅勤務のために買った
白い
プリンタ用紙500枚、
こうして
誰かの
とげを抜こうとして
きょうは
全部
使い終わった

東京・西荻窪
田中庸介