4月7日(火)

春のニュースが流れる執務室はしんとして
みな少し俯き
静止しているように見えた
窓を開け放っていたので
航空機の音
それから鳥の鳴き声が聴こえてきた
羽のあるもの
誘惑をする
✳︎
飛行機雲が見えない
けれども
先日買った古本が
ポストに届いていた
『在りし日の歌』の復刻版だ
中也の帽子は
羽のようだから
この空にみずから飛び立つことだろう
✳︎
子どもの頃
空気の色が透明だから
透明のことを「空気色」と呼んでいた
決して目に見えることはないが
春は羽ばたき
遊歩道に
花びらを散らして
たくさんの証拠を残した

福岡・博多
石松佳